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意地悪なあの人 2
「ぷ、プロポーズってあの?!」
「指輪は?出された?」
「うん…水族館で…」
今思い出しても恥ずかしい。あんな大勢の知らない人に祝福されるのは今生で一度きりだろう。水族館という単語を出すと二人は顔を見合わせて、相良さんって意外とやるね〜と笑った。
「それで…?男って話してどうだった?」
「最初はすごく戸惑ってて…態度もよそよそしかったんだけど、水族館では手を繋いでくれて。その、プロポーズの時には“性別なんて関係ない“って言ってくれた」
「キャー!」
「相良さんかっこいー!」
店にいるため小さな声で紗枝と伊藤が歓声を上げる。そして、ここからが本題だ。
「あの、二人とも…私謝らないといけないことがあって」
「え、なになに」
紗枝が顔を寄せる。深呼吸して雅は口を開いた。
雅が話したのは自分が男性として生きたいと願っていること、性転換手術は望んでいないこと、祖母にそれを強制されていることである。二人は雅が話している間一切口を挟まなかった。真剣に、真面目に聞いてくれた。
話終わると雅はサービスのレモンスカッシュを口に含んで喉を潤した。
「今まで、言えてなくてごめん。でも、私は女性になる気はないの」
ぺこりと頭を下げる。先に反応したのは紗枝だった。
「なんで謝るの」
「え、だって…今まで私のこと女性として接してくれてたのにそれが嘘だって…」
「私だって宮子…雅の性別なんて気にしない!普通に良い友達だと思って一緒にいたの!」
紗枝が立ち上がって大声で言うが、次の瞬間自分のした行動を恥じ周りに頭を下げながら座り直した。
「それに雅がそうなったのだってそのおばあちゃんが原因でしょ。雅は悪くないじゃん!」
紗枝がそう言うと伊藤が賛同するように何度も頷いた。
「そうですよ!安倍先輩悪くないです!それに私もまだ日が浅いですけど、安倍先輩のこと大事なお友達と思って性別関係なく接してました!」
「二人とも…」
雅の目が潤む。雅を非難するどころか擁護してくれて…こんな良い友達を持ったなんて、と雅が感動していると、紗枝が雅の両手を取って握ってきた。
「むしろこっちが言いたい!雅が男だからって私たちと仲良くしないとか、そんなことないよね」
「そんなことない!だって紗枝ちゃんも伊藤ちゃんも私の大事なお友達だもん!」
ぽろ、と先に紗枝の瞳から涙がこぼれ落ちる。それに呼応するように伊藤がずるずると鼻を啜った。
「本当に、ありがとう…でも伊藤ちゃんごめんね、同性愛苦手なのにこんな話して」
「あ、それなんですけど…」
伊藤が涙を拭う紗枝を見る。
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