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意地悪なあの人 3

 紗枝はにこっと笑うと雅の手を離し、伊藤の肩をそっと触った。 「私が育てました!」 「うん?」 「実は紗枝先輩にBLの良さを教えてもらって…同性愛克服しちゃいました!」  ずこっと雅がずっこける。確かに紗枝は腐女子だったが、まさか伊藤を育ててしまうとは。雅は先ほどの感動はどこへやら、あははと声をあげて笑った。  それからまた談笑しながらパスタを味わっていると電話がかかってくる。裕司からだった。 「あれ、相良さんだ。今日は友達と飲む予定だって言ってたのに」 「相良さん?出ておいでよ」 「良い?ありがとうね」  店内で電話に出るのはマナー違反のため、雅は店員に断りを入れ店外へ出させてもらった。 「あ、相良さん。どうしたんですか?今日ってお友達と飲むって言ってませんでしたっけ」 電話に出てそう言うと、裕司は少しぼんやりした声で今飲んでると言った。少し酔っているのかな、どうしたんだろう、と考えながら応答する。 すると少しして裕司がとんでもないことを聞いてきた。 「…雅は性欲とかあるのか」  ぼん、と思わず顔が真っ赤になる。 「へっ、せい、せっ…な、なんの話して」 「どうなんだ」 「どう、性欲…」 「雅?」  早く答えるよう促され、雅は思わず相良さんの変態!!馬鹿!!と叫んで電話を切ってしまった。  なんなのだ、急に。酔ってるにしたって酷すぎる。電話を切る瞬間周りがざわっとしていたし、おそらくそういう男子の“ノリ“なのだろう。それにしたってそんなことを友達がいる場で聞いてくるなんて、と憤っているとまた裕司から電話がかかってきた。  出るかどうか迷い、今度そういうことを聞いてきたら二度と電話に出てやらない覚悟で電話に出た。軽く涙ぐんでしまったのは仕方ない。 「はい」 「ごめん雅、ほんとごめん。酔ってて変なこと言った」  向こうの裕司は本気で反省しているようで、友達も周りにいないようだった。それでもいくらかボソボソと裕司を罵ってしまう。 「えっとだな、本当にごめ―」 「私にだって性欲はあるもん!バーカ!」  再度謝ろうとした裕司に被せるように言葉を発して電話を切ってやる。さっきの意趣返しだ。びっくりしてなにも喋れなくなればいい!  けれども雅は自分の言ったことが結局恥ずかしくなりうずくまってしまう。 「はぁぁ…」  性欲なんて…ない方がおかしい。まだ自分が男だと話せてない時、裕司に押した倒された時なんてその…男性器が膨らみかけてなるべく立膝をして隠したほどだ。雅にだってしたい気持ちはある。でもそんなこと恥ずかしくて言えない。  気持ちが収まらなくて裕司とのトーク画面に次はない、という意味でメッセージを送る。すぐに既読がつき、裕司から再度の謝罪と埋め合わせをするという内容が送られてきた。  その、デートだって、どうなるか。そう考えてまた顔が赤くなり、雅は勢いつけて立ち上がると紗枝と伊藤に話を聞いてもらうために店内に戻って行った。    

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