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家族 1

   「家族に会ってほしい」  そう言った時の雅の顔を忘れないだろう。  初めてのセックスは大成功を収め、―雅には言っていないが―友達と部屋でそれについてをツマミに飲み明かしたほど感動するものだった。最初の方は気持ちよさに困惑して泣いていた雅も、最後の方は自ら腰を振って求めてくれた。それが嬉しくて嬉しくて…。ああ、大切な人とするセックスはこんなにも気持ちいものなのだと知ることができた。  嬉しさのあまりそれ以降もデートの度に雅を求めていたのだが…とあるおうちデート、雅をいつものように襲おうとした時だった。雅がぺちんと裕司ほっぺを叩き、もうだめ!と怒ってきた。 「こ、ここ、今月で何回目だと思って…!」 「…四?」 「五回目!私、確かに裕司とできるのは嬉しいけど…恥ずかしいの!ちょっとは遠慮して!てか毎回毎回普通する?!」 「する。僕はしたい」 「〜!」  顔を真っ赤にした雅が手を振りあげ、またぺちんと裕司の頬を叩いた。全く痛くは無い。その手を掴み手首の内側にキスをする。ひゃっと雅が声を上げた。 「嫌、か?」 「嫌じゃ、ないけど…裕司は学習型だから私…俺、が…気持ちよかったとことか次の時には覚えてて悦がらせてくるから…死んじゃうです…」  だんだんと小声になっていく雅がかわいくて愛おしくて…裕司は俯く雅の顔を覗き込み、どこまでならいい?と聞いた。 「なに、どこまでって…」 「お尻が気持ちよくてしかたないんだろ」 「い、言わないでよ!」 「じゃあ、お尻以外ならいいかなって」 「そう、そういう問題じゃな、」 「ペニス触り合いっこするだけでも僕は満足できるよ」  雅に触っていたいんだ、と耳元で告げる。雅がばっと裕司から体を離し、顔を覆ってううううと呻きながら倒れた。かわいいな、と思いながらからかってごめんと言う。  いくら裕司でも雅が嫌がっているのに無理にしようとは思わない。  その気持ちが伝わったのか、雅はゆっくり起き上がった。顔はまだ赤い。 「…したくないわけじゃないの、ただ本当に…毎回気持ち良すぎて」 「わかってるよ」 「ありがとう裕司…」  雅がぎゅっと抱きしめてくれる。ふんわりといい香りがした。その香りのせいでまた雅を押し倒しそうになったが、どうにか堪える。  今日も雅は女性の姿をしている。しかしここ一ケ月彼は男性として生活しているらしい。髪も男性スタイル、とまではいかないもののショートカット程度に切っており、会社では薄化粧に切り替えて出勤しているようだ。最初こそ驚かれたらしいが、気分を変えてみた、と言い訳していると言っていた。  だがどうにも口調が直らないらしく、まるでオネェみたいだと落ち込んでいるというのを電話口に言っている。裕司的には気にしないのだが、雅はそうはいかないようだった。  そして全ての元凶である祖母だが…ここ三ケ月ほど連絡が取れていないようである。つまり旅行の時から連絡が取れていないのだとか。初めは、ほぼ毎日の連絡もなく一カ月に一回の訪問もないないことにせいせいしていたものの、徐々に不安になってくる。ついに二週間前に雅から連絡したが電話は通じず、仕方なく祖父に電話したところ、そのうちこっちから連絡するから待っていろ、とだけ言われて切られてしまったようだ。雅は心配しているものの、初めての自由に浮かれ、もう何年もしていない男性としての生活を謳歌している。たとえば、化粧せず、Tシャツとジーンズで街を出歩いてみたりなど…。普通の男性なら誰でもできることを楽しんでいた。  …まあ、裕司は旅行と初めのセックス以外雅が男性の姿で生活している見たことがないのだが。そこは少し気に入らない点だった。

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