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第10話 我慢させたから頑張るね!

 心は完全にかけちがったまま、体はがっつりと繋がり絡み合う。何度も打ち寄せやってくる快感の高みに、士匄(しかい)は内股を震わせながら、喘ぎ達する。ぐずぐずに肉が溶け落ちていきそうな悦楽に、脳は麻痺し、思考は消え、士匄はただ淫情だけを求めて、声で体で視線で趙武(ちょうぶ)に媚びた。そうしよう、と意図したわけではなく、自然に媚態を作るわけだから、好色であるし、要領の良さも極まれり、というところである。  足を開いて尻を振り、己の放った精液を指にこすりつけ伸ばし、こらえきれないように口に含んで人差し指を軽く噛む。舌を踊らせその指を見せつけるように舐める。その間も、引きつった喘ぎと吐息は止まっていない。士匄の腹の奥で弾ける絶頂が、途切れることなく続き、その悦びにひたりきり、それしか考えられない。もっと言えば、趙武の性器で頭がいっぱいである。 「あ、趙孟(ちょうもう)、もぉ、むり、あ、またぁ、また、いく、きもちいい、きもちいい、趙孟の、あ、きもちいい」 「范叔(はんしゅく)の中も凄い、きもちいい、あ、」  趙武が身をふるわし、中に精を注ぎ込んだ。はあ、とため息をつく趙武と共に、士匄も身をふるわせて、あ、とため息をつきながら呻いた。腹の奥で熱いものがじわりと広がっていく感覚が、厭わしい気持ちと嬉しい気持ちと、双方がある。そして、趙武はこれをかき混ぜる癖があって、それをされるとまたタガが外れたような気持ちよさが這い上がる。  無意識なのであろう、趙武が腰をゆらしてかき混ぜた。奥に肉と精がこすられ、ニチュニチュとした音とともに痺れた快が支配していく。 「い、あ、それむり、あ、はひ」  内壁を震わせて首を振る士匄に、趙武が汗を拭いながら顔を向ける。あ、と今なにかに気づいた、という声を上げた。 「なんか、こうやってると……范叔に子種を仕込んでるみたいですね。えっと、自分で言って興奮してきました」  あはは、とあどけなく照れくさそうに笑いながら、趙武が再び腰を動かし始める。本当に復活したようで、中で固い怒張が内壁を行き来していく。 「も、ぉ、むり、ひあ、あ、あ、熱、熱い、あっ」  何度も達したあと一瞬落ち着いただけに、さらなる刺激は強く感じられる。今度はゆっくりとしたお伺いもなく、趙武の腰は激しさをもって士匄を責めたてた。欲に弱い士匄はもちろん即座に陥落する。 「あー! あー! イクッイクイク、はひ、いった、いったからぁ、きもちいい、むり、あっあっあっ」  恍惚とした顔でよだれを垂らしながらあえぎ、目を泳がせる。そうして士匄の手が空を切った。趙武がすぐに察し、体を繋げたまま、士匄の足をからげて前に乗り上げた。自然、尻が浮き上から性器に貫かれる姿勢となり、士匄はそのまま何度めかの絶頂で叫ぶ。それをしり目に、趙武が士匄の腕を取り肩に回させた。士匄は思い切り抱きつき、足も趙武の腰に絡めて全身で受け入れる。ずぶ、と肉棒を引かれ、ずんっと腰を叩きつけられ、奥底まで貫かれ、士匄は、あー、いい、おく、おくいい、と欲望そのままを垂れ流していく。すっかり放置されている陰茎はカウパー腺液を溢れさせしぼんだまま濡れきっていた。 「范叔の奥、すっかり物欲しく吸い付いて、穴はふわふわなのに、時々離さないの、本当に好き者、淫乱、ちんこ好きで」  欲に浮かされて、趙武も相当おかしい言葉を吐けば 「あ、ぁ、おく、きもちいい、趙孟のちんこ、好き、きもちいい、もぉ、いったぁ、またいくっ」  士匄も墓穴に叩き込んでくださいと言わんばかりの淫語を叫ぶ。  趙武は性器というワンクッションはありつつ、士匄から好きと言われて、ますます頭に血が上り、己の欲情のままに士匄を蹂躙した。体位のおかげで近づいた顔を、眉も額もまぶたも頬も、唇で撫で、鼻を噛み、唇を合わせて舌をこすりあわせ絡め合う。全体重をもって士匄の中に腰を落とし怒張を行き来させる。すっかりできあがっていた士匄の肉壺は身勝手な動きにも反応し、粘っこい快感の渦をもたらしていく。 「はひっ、ゆるし、ゆるひて、おかひ、おかひくな、あ、またぁいく、いってるからぁ、いくいく、あ、もぉきもちいい、むり、むり」  趙武にしっかりと抱きつき、その衣を握りしめ、舌をつきだしながら、士匄はもう幾度目かわからぬ雌の絶頂で半ば白目をむいた。無理だ許してと言いながらも、趙武の腰に足を絡めて腰を擦り付けている。 「はんつき。半月も我慢させちゃいましたからがんばりますね」  半月もお預けくらったから覚悟しろ。つまりはそういうことである。士匄は必死に首を振って許しを請うたが、再び愛欲の海の中に放り投げられた。  趙武はけしてうまいわけではないが、本人の性質もあって士匄に合わせて動く。そのために士匄は淫楽をなかなか手放せないのだが、この日は趙武の粘っこい獣欲がこれでもかと上乗せされ、支配される暗い歓びと宮中で犯されるという禁忌感で、士匄はこれでもかと快楽に堕ちた。 「范叔かわいい、私のちんこじゃないと、満足できないなんて、ここ女陰ですか、おまんこですか、ちんこ狂いの雌じゃないですか」  のぼせて調子にも乗った趙武が興奮のまま垂れ流す淫語に、士匄はふにゃふにゃの顔を晒しながら頷き 「はひ、めしゅ、わたし、めしゅらから、おまんこ、いく、あ、」  と全く回らない口で返す始末である。素面なら憤死しそうな淫語をいくつも請われるまま言い、命じられるがままに足を広げ腰を振り、口を開けば喘ぎかイクかむりか気持ちいいで、何度も身をふるわせて達し続ける。連続で雌イキし、むしゃぶりつく。趙武のもたらしたこの快楽が忘れられなくてこの関係にこだわっているのだから、今、士匄は多幸感で溢れていると言ってよい。直前のやりとりはともかく、である。  士匄は反射の多幸感に一時的に酔いしれていたが、趙武といえば、己では説明しづらい心の奥からわきたつ多幸感の中、士匄の体内に二度目の射精をしていた。士匄の発情の匂いが鼻孔をくすぐり、この人はなんてかわいいんだろう、この子種で妊娠すればいいのに、とバカなことまで考えていた。

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