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俺様なイケメン先輩がア●ルセックスに嵌まった 第11話 恋に溺れる | はに丸の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
俺様なイケメン先輩がア●ル...
第11話 恋に溺れる
作者:
はに丸
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第11話 恋に溺れる
趙武
(
ちょうぶ
)
が果てて終わっても、
士匄
(
しかい
)
は余韻から帰ってこれずぼうっとしていた。それを良いことに、趙武が横に寝転んだり上に少し乗り上げたりしながら、額をなでたり、こめかみに口づけしたり、手を絡ませたり喉仏に指を這わせたりする。事後の戯れというより、人形か玩具を弄んでいるような仕草であった。 扉の向こうから あの、まだですか という、声がした。部屋を管理している小者であった。問答の末、長く睦み合っていたのである。様子を見に来るのも当然であろう。良識ある大貴族の
長
(
おさ
)
や令息たちが勝手に帰るということはないと思うが、何かがあれば咎められるのは己と焦っているのかもしれない。 趙武はゆっくりと起き上がり 「少し白熱しております。まだ、問いに対する答えが出ぬのです。明日に引きたくございませんで、今終わらせたくないのです。お待たせしておりますが、お声掛けしますので、そのまま」 丁寧な言葉であるが、呼ぶまで干渉するな、という命令である。小者は戸惑った声音を隠さず、しかし、 「かしこまりました」 と静かに扉のわきに座った。彼の職務は門番ではないため、惨めであろう。 士匄は小者の声でさすがに我に返った。ふらりと起き上がり、舌打ちをする。たとえ身を整えてもこの部屋の惨状は変わらない。士匄の精液は床に飛んでおり、趙武の精液も士匄の中から溢れ流れて落ちている。また、においがひどい。互いの性の臭気が充満しており、体にもまるで垢をこすり合わせたような悪臭がある。女とならここまでの臭いにならない。 「あの小者を呼び入れろ」 士匄は小さく呻いた。趙武が目を丸くして、 「そんなことをすれば、宮中で淫に興じたことが明るみになります」 と言う。当然だろう、と士匄は呆れた。 「お前とわたしが、ここまで派手におっぱじめたものだ。我らで清められるか、わたしは生まれてこの方掃除などしたことないわ。小者が掃除すればバレる、だいたい、こんな性の臭いあらば誰でもわかる。ゆえ、小者を使って清め、消せば良い」 小者どもは公室の持つ奴隷であり財産である。ゆえに、士匄の言葉は差別的殺人という意味で非人道であり、当時の価値観でも強盗宣言に近い。趙武は逡巡したが、明るみに出る意味はわかった。 「もし気づかれたなら強く言い含めれば良いのです。小者の方々は口が固いのですから。この場を清めるのは我が手勢にさせます。あなたはまだ嗣子ですが、私は長ですもの。手勢の格は高く、宮中に入れるくらいできます」 理由など小物に言う必要ないでしょう、と趙武が柔らかく最後に言った。口が固いは、固くなければ死に直結する、の意味である。趙武が長なのは、父が早く死んでいるからであり、本人の資質には関係はない。が、跡継ぎ程度の士匄よりは連れ歩く家臣の格は高く、宮中の中に入って侍るものもいるだろう。 「……今日、この場でセックスを強行したのはお前だ、最後まで任せる。しかし、二度と宮中でするな、何を考えてる、
君公
(
くんこう
)
のいる神聖な政治の場だ」 白旗あげながらも吐き捨てる士匄に趙武が、そうですね、と無機質な声音で返す。 「まあ……少し血が上ってしまいました。冷静ではなかったと認めましょう。あなたが禁忌と知りながら淫に狂い外し続ける姿を見たくなったのも本音ですし、浅ましいあなたを感じたかった。また、こんなめにあってしまったら大変ですから、私が兄としてあなたを教導します。義兄弟の契りをしましょう」 金属のような冷たく平らかな声が、少しずつ熱がこもり、最後には陶酔の極みとなる。趙武が熱情に浮かされた笑みで士匄を見つめてくる。すっかり余韻も消え冷静になった士匄は、とことん呆れた。 「頭を冷やせ。義兄弟はおおやけにするものだ。年上のわたしが弟として、年下で未熟なお前を兄とできるわけなかろうが。お前がわたしより先に進んでるはすでに氏族の長であることだけだが、それも世話してる後見役の支えあってのことだろう。体の関係のためだけに、義兄弟とか言うな」 「違います、体のためではなく、責任です。私があなたを抱く責任として、きちんとしたいんです。だらしないのは良くありません」 趙武の反駁に士匄は眉をしかめた。趙武の言葉は、幾重にも自家撞着と自己欺瞞と掛け違いを感じてならないが、具体的にここだ、と指摘もできない。ただ、わかっていることがひとつある。 趙武は、士匄の性消費の道具になりたくない、ということである。 さすがの士匄も、己のような男ぶりの良い人間を抱いて満足しないとはなんだ、とは言わない。少し思うが、口に出すほど厚かましくはない。 趙武は、なぜか、恋を訴えず、義兄弟に執着する。士匄には、趙武が責務に陶酔しているさまはわかったが、それより奥はわからなかった。 ――思ったよりめんどくさいやつだった 性をマウンティングの暴力として使うていどには練れている。士匄は趙武をそう思っていたが、そうでもないらしい。が、快楽は捨てがたい。今日、今さきほどまでのセックスも、背徳感込でぶっ飛ぶほど気持ちよかった。別のパートナーをいちから探すよりは、趙武のめんどくささに付き合ったほうがマシ、と士匄は瞬間的に結論をつけた。どこまでも利己主義である。 「
趙孟
(
ちょうもう
)
。義兄弟は無しだ。理に合わん。互いに愛を語り、恋人になればよい。が、お前はそういったことがわからんと弱音を吐く、そんなこと知るか。わたしはお前を好きになることに決めた。ああ、思い切りお前を恋しいと思うことに決めたゆえ、次からお前をくどく、恋をささやき媚びて股を開く。少なくとも体だけの関係でなくなる、ここで妥協しろ」 少しドスの効いた士匄の声音に、趙武が、呆気にとられた顔で反論する。 「いやいやいやいや。好きになることに決めた、とか、恋しいと思うことに決めた、とか、つまり
范叔
(
はんしゅく
)
は私のこと好きじゃないですよね? だから、そういう嘘のごっこ遊びはいらないんです、だらしない、いやらしい。少々不自然でも押し通して義兄弟を」 そこまで必死に言葉を連ねる趙武の襟元を掴み、引き寄せ、士匄は睨みつけた。 「ごっこでも遊びでもなく、本気だ。わたしはお前に恋をすると決めた。お前はどうもそのあたり鈍いようだから言うが、恋を自然現象とでも思っているのか、アホが。少しでも良いと思えば己で盛り上げるものだ。わたしはお前に全力で恋をしてやる。お前の望む体を繋げる『責』として、これ以上の理はあるまい。わたしはお前が恋しいから抱かれたい、そのように陶酔するよう、お前もわたしに仕掛けろ」 言い切ると、呆然とする趙武を放ち、ようやく立ち上がる。足を開きすぎた股の痛み、床が苛んだ体の重み、頭も何度もすり付け打ったため、痛い。絹で織りなされた衣は皺と体液で無惨であった。 「お前、手勢を呼ぶときに衣も持たせろ。互いに酷い」 言われ、趙武は己の姿を見回し、ようやく健全な青年の顔で頬を染めた。彼は控えていた小者に、趙氏の手勢を呼びつけるよう命じた。 「我が手勢に、替えの衣をいくつか。そのような不審なお顔をなさらないでください。先達に我が財をお譲りするだけのお話」 なぜ、そんな話になったのか、など小者が知る必要はない。小者は疑問を飲み込み機械のような顔となって頷くと、去っていった。 士匄は、己が趙武をその意味で好きかといえば、現時点違うと自信もって断言できる。だからどうした。人間、思い込めばいくらでも恋になるものなのだ。士匄は欲望に素直であるし、強欲である。趙武のもたらした淫欲を享受するためなら、いくらでも恋に溺れてやる、文句あるか、と思っていた。
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