6 / 36

03-2.初めての恋※

 反論をする前にアーサーはカイルのズボンに手をかけており、慣れた手つきで脱がしていく。 「びっしょりだな」 「見ないでください」  カイルは必死に隠そうとするが、あっけなく、下着も脱がされてしまった。 「かわいいな」  アーサーは抵抗を止めないカイルがかわいくてしかたがなかった。  その手はカイルの尻に当てられ、ゆっくりと指を尻の穴に入れていく。 「ひっ」  カイルは悲鳴に似た声をあげた。 「そこはだめです!」  カイルの言葉がアーサーを止めることはできなかった。  アーサーの指が前立腺に触れる。 「ひゃんっ」  カイルは喘ぎ声をあげた。 「濡れてるな」 「そんなわけがありません!」 「自覚がないのか?」  アーサーは指で前立腺を擦る。そのたびにカイルは喘ぎ声をあげた。  穴からは愛液が漏れており、カイルが否定してもその量は増える一方であった。体がアルファからオメガへと変貌を遂げている証拠だった。それを認めないと言わんばかりの顔をするものの、アーサーに前立腺を刺激されると蕩けたような顔になってしまう。 「ひっ、んんっ」  カイルは体を捩る。  必死に快楽から逃げようとするカイルに追い打ちをかけるように、アーサーは指を二本に増やした。 「やだ! また、いっちゃうっ」  カイルは言葉遣いを気を付けている余裕すらなかった。  腰が動いてしまう。  頭が真っ白になるほどの強い快感に身体を震わせる。しかし、射精はしなかった。射精をした時よりも快感は深く長いものであった。  目の前がチカチカとする。 「中でイけたな」  アーサーは満足そうに笑った。  それから、そそくさと自身のズボンに手をかける。  限界まで腫れあがった陰茎をカイルの穴に当て、ゆっくりと中に侵入していく。 「ひっ」  カイルは悲鳴をあげた。  腹の奥底でそれを待っていたのを感じる。 「ま、待って、アーサー。俺、イってる、から」 「待てない」  アーサーは奥まで一気についた。  その衝撃でカイルは射精をした。 * * *  穴から零れるほどに中出しをされたカイルは気を失っていた。  ……痛みがなかった。  強い快感の中に放り出された気分だった。  それがオメガになったということだと嫌になるほどに実感する。一過性の発情期を体験し、そのままの勢いでセックスをしてしまったことに気づき、顔を真っ赤に染める。  ……気持ちよくて頭がおかしくなるかと思った。  処女だったのだ。痛みはあったはずである。しかし、それを上回る快感で痛みさえも気持ちよく感じていた。 「……目が覚めたか」  アーサーに声をかけられ、慌てて飛び起きる。  飛び起きると同時に腰に電気が走ったような痛みが生じた。痛みがないと錯覚していたのは横になっていたからのようである。 「は、い。アーサー」 「大丈夫ではなさそうだな。医者を呼ぼうか?」 「いいえ。必要ありません」  カイルは慌てて否定した。  ……医者を呼んだところで安静にしていろと言われるだけだ。  なにより、なにをしたのか聞かれるだけで恥をかくようなものだ。 「初めてでしたので。今後は慣れていくと思います」  カイルは騎士だった。  騎士は体を鍛えることが仕事である。  その為、痛みの伴う訓練も受けたことがあった。それと同様に考えたのだ。 「初めてか」 「はい」 「それは、……手加減をするべきだったな」  アーサーは言いかけた言葉を途中で変えた。  ……口元が緩んでいる。  笑っているようだ。  にやけているのにも近いかもしれない。 「アーサー、鉄仮面の騎士団長の異名が泣きますよ」 「なんだ、その異名は」 「知らないのですか? 社交界では有名ですよ」  カイルの言葉にアーサーはなにも言わなかった。  どうやら心当たりがないようだ。 「無表情で鉄仮面を被っているみたいな顔をしているから、そう言われていました。令嬢たちは怖がっていましたよ」 「そうか。それは好都合だったな」 「え? 怖がられるためにしていたんですか?」  カイルは驚いた。  令嬢たちに怖がられて、社交界から浮きたいと思ったことは一度もなかった。それどころか、妹を溺愛している性格の難さえなければ、カイルは非常に人気だっただろう。  妹は溺愛されるのに値しない性格をしていた。  気に入らなければなんだってする人だった。それを好きなだけ甘やかす姿は社交界でも有名であり、カイルが不人気の原因だった。  ……怖がられたい人もいるのか。  意外だった。  カイルは人気者になりたいと思っていたこともある。セシリアを溺愛してさえいなければ、その欲望は叶ったことだろう。  そうすることでしか恋心をごまかせなかった。 「カイルにだけ好かれていればいい」  アーサーの言葉に対し、カイルは頬を赤く染めた。 「そうですか」  カイルは照れくさそうに返事をした。  それから無意識に手で首に触れる。噛み痕がはっきりと残っていることを指で確認し、番になったのだということを再認識した。 「アーサーの番になれて俺は幸せです」  カイルは上半身を起こした。  体は痛みを発しているが、我慢できないほどではない。 「好きです。アーサー」  カイルはアーサーを見つめた。  あいかわらず、なにを考えているのかわからない。しかし、愛の告白を受けて困惑している様子ではなかった。  当然のように受け止めている。

ともだちにシェアしよう!