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番外編 王妃陛下のお気に入り
王妃陛下の機嫌は最近よかった。
お気に入りが手に入ったのだ。
「今日はどのドレスを着せようかしら」
王妃陛下は考える。
お気に入りの人形を手放す気などなかった。お気に入りの人形の名前はカイル・ホワイト。大公夫人であり、王妃陛下の運命の友である。
王妃陛下はカイルのわがままならば、なんでも快く聞いた。
それが不毛の土地にしようとしていた大公領の再開発であっても、お気に入りを手放すくらいならば、再開発の願いを聞き届けた方が良かった。元々、大公領に恨みがあるのは王妃陛下だけだ。
王妃陛下は美しいものが好きだった。
前大公は美しかった。しかし、嫁として選んだのは子爵家の落ちこぼれだった。それが許せなかった。
美しいものの傍には美しいもので埋め尽くすべきである。
王妃陛下の持論は国家権力に影響する。前大公夫妻は嫁が美しくないという理由で事故死として片付けられてしまった。前大公の息子であるアーサー・ホワイトの命が助けられたのは、前大公に似ているところがあったからだ。
それだけの理由で命だけは助けた。
しかし、冷遇した。
「お母様。また人形遊びですか?」
「あら、文句があるの? 第三王子」
「いいえ。少し興味があっただけです」
王妃陛下に声をかけてきたのは第三王子だった。
第三王子は性転換の妙薬を作り上げるなど魔法薬学の権威といえるほどの実力者だ。しかし、研究熱心のあまり、結婚適齢期を逃してしまっている。
「カイル・ホワイトは希少な実験体ですから」
第三王子は性転換の妙薬を飲んだ者を直接観察をしたことがない。
そもそも、国の方針と合わなければ性転換の妙薬が使われることはない。
「カイルは美しい人形よ。大公領の再開発に目を付けたのは気に入らないけれど、カイルの機嫌を損ねたくなかったんですもの。しかたがないわ」
「お母様がそれほど評価されているとは意外でした」
「あら、わたくしたちは運命の友なのよ。運命共同体といっても過言ではないわ」
王妃陛下は笑った。
今日はどんな人形遊びをするのか考えるだけで心が躍る。
王妃陛下はそんな毎日を過ごしていた。
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