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「なーエヴァン、俺、もしかしてセックス下手んなった?」  現在進行系で突っ込んだものを抜き挿ししながら、組み敷いたうっとりするほど美しい顔立ちの男へと晃大は尋ねる。 「しら、ない……っ。なんで……そんなっ、こと……っ」 「だっておまえ、今日あんま気持ちよさそうじゃないし。どっか痛い? 一回抜く?」  腰の動きを止め、撫でるように頬に触れると、エヴァンはふいと目線を逸らした。 「……別に、痛くない。そういうの、いらないから」 「あっそう」  股は開いても、心は開かない。体を売る仕事をしているだけあって、その辺はしっかりと線引きしているみたいだ。  しかし、いくら同意とはいえ、相手が乗り気じゃないセックスはこっちのテンションも下がる。一人で気持ちよくなるだけなら、オナニーで十分だ。  中断、という言葉が浮かんだ矢先、ふいにぎゅっと細い腕を回して抱きつかれた。 「もっとして、晃大……。晃大のおっきいので、もっと奥、ついてほしい……」  とびっきり甘い声での、とびっきり淫らな要求。真下からこちらを見上げる硝子細工のように澄んだ瞳に、萎えかけていたアソコが一瞬にして復活した。 「そうこなくっちゃ」  ふっと口角を上げて、晃大は止まっていた腰の動きを再開する。 「ほらエヴァン、ここだろ? おまえの好きなとこ」 「あっ、そこっ、そこそこ……っ」  一突きするたびに、エヴァンの中がきゅっ、きゅっと収縮する。  これが同じ男の体だなんて信じられない。それをいうならば、男を抱いて気持ちよくなっている自分だって相当信じられない状況ではあるのだが、エヴァンとこういうことになったきっかけは、本当に単なるノリだった。  今から約一年前。寮のドアポストに、手書きで記された謎のクーポン券が入っていた。『エヴァン・スウィフトとの極上セックス。初回限定五千円オフ。気になる方は205号室へ』みたいなふざけた内容だったと思う。何かのいたずらかと思い放置していたのだが、数日後、寮の大浴場でエヴァンの姿を目の当たりにした晃大は、思いがけず視線が釘付けとなった。  透き通るグレイッシュブルーの瞳が特徴的な、都内Sランク大学に通うアイルランド出身の特待留学生。ところどころ金色に光るウェーブがかったライトブラウンの髪に、彫りの深い目鼻立ち。ヨーロッパ系の外国人だけあって百七十五センチ以上はありそうな長身だが、全くもって威圧感を感じさせない、むしろ艶めかしささえ纏った靭やかな体躯。頭の天辺から爪先まで手入れの行き届いた、雪のように白い肌――  興味を惹かれ、声をかけ、その日のうちに体を重ねた。基本料金、三十分三万円。とんだ値段をふっかけるだけあって、見かけにとどまらず、エヴァンのテクニックは相当なものだった。  女の子相手にするときは気を遣って四分の三ほどまでしか挿れられない二十センチもある巨根を、エヴァンはさして痛がることなく根元までずっぽりと呑み込んでくれる。その上で、さっきのような殺し文句を吐く余裕さえあるというのだから、こちらもまた安心してセックスに興じられるというものだ。

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