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「あ、イクっ。イク、イクっ――」  お決まりの台詞を口にして、エヴァンの内側にぎゅっと力がこもる。 「っ、きっつ……」  中心を締め向ける凄まじい圧力に、『出す』のではなく『搾り取られる』ような感覚が駆け抜けた。 「っあ〜、最っ高……」  恍惚と零して、晃大はぐったりとエヴァンに覆い被さる。密着した肌が気持ちいい。突っ込んだまま寝てしまいたいくらいの多幸感……  と、次の瞬間、枕元にあったエヴァンのスマホのアラームが鳴った。ピクリと肩を揺らしたエヴァンに、力ない手つきで肩を押される。 「時間……も、抜いて……」  余韻に浸る晃大とは裏腹に、エヴァンの切り替えは早い。無賃労働は一切しないのがエヴァンスタイルだ。 「たまにはちょっとくらいサービスしてくれよ、エヴァン。動かないからさ、もうちょいこのまま……」 「抜いて」  さっきよりも幾分とはっきりとした口調で言われて、晃大はじっとエヴァンの目を見つめた。  ややあって、エヴァンがふっと視線を逸らす。 「エヴァ――」 「朔実(さくみ)、待ってるから……早く抜いて」  聞き慣れない名に、晃大はことりと首を傾げた。 「朔実?」  問い返した晃大を、いいからさっさと抜けと言わんばかりの目でエヴァンは見る。 「……あー、はいはい。じゃ、力抜いて」  そっと下腹を撫でて言うと、「もう抜いてる……」と不貞腐れたようにエヴァンは言った。しかし案の定、少し中が擦れるだけでまたエヴァンの内側にぎゅっと力がこもる。 「ん……っ」 「エヴァンの中、超敏感になってる。抜くだけでイっちゃうんじゃない?」 「うる、さ……っ、アッ!」  ズルンと、体の奥深くまで突き刺していたものを引き抜いたと同時、ビクビクッとエヴァンの体が震え上がった。 「はい、おしまい。気持ちよかったっしょ?」  痙攣するお腹をトントンと優しく叩いて、晃大はエヴァンの上から退いた。  今日は一時間コースだったので、いつも以上に体が敏感になっているのだろう。答える余裕もなく、エヴァンは仰向けで息を引き攣らせている。 「で、結局朔実って誰なの? 今日一緒にいたやつ?」  ベッドの端に転がっていた下着を取り、足を通しながら晃大は再度同じ質問を投げかけた。  普段から他人と行動するイメージのないエヴァンが、今日エントランスで声をかけたときには見慣れない寮生と歩いていたのだ。エヴァンとは対照的な、素朴でぱっとしない印象の青年だったけれど…… 「……ルームメイト。四月から、一緒の」 「ああ。そういやおまえ、またルームメイトに逃げられたって言ってたもんな。見ない顔だったけど、最近入ってきたやつ? ってことは、新一年か」  晃大の問いかけに、エヴァンはやや面倒臭そうにぎゅっと枕に顔を押し当てた。面倒くさいというか、単に疲れて眠たいだけかもしれないが。 「二年。俺と一緒」  「へえ」  だったら、途中から寮に入ってきたということか。珍しいが、なくはないことだ。 「おまえとは正反対のタイプに見えたけど……仲いいんだ?」   見た感じ、二人は外食帰りのようだった。いつも通りセックスの誘いを持ちかけた晃大に、エヴァンは一瞬、窺うように朔実の顔を見ていた。

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