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第13話 紅の寝台 其の十三★
現れた白くまろい小さな臀の蕾に宛がわれるのは、すっかり勃ち上がった紫雨の剛直だ。彼の御手付きの香りに反応して、先端が後蕾に擦られるだけで蜜が滴り落ちる。いつでも挿入出来るのだと言わんばかりに押し当てられれば、後蕾は甘くひくついて淫らな口付けを返すように、剛直の先端に吸い付いた。
「……かさい……っ!」
堪らないのだとばかりに、熱い楔のような紫雨の剛直が、一気に療の胎内の奥まで貫いた。
「──っ! ……あ、あぁぁっ──!」
苦しさと痛みに息を詰めていた療は、やがて最奥から溢れくる官能に声を我慢することが出来なかった。
胎内の悦いところにいる剛直の先端を少しでもずらそうと、身体は無意識の内に膝を立てて寝台を蹴り、上へと上がろうとする。
「……かさい……これ以上、逃げてくれるな……っ!」
「──ひ、あっ……!」
紫雨が療の腰を持ち上げて体勢を変えた。
両膝の裏側に腕を通されて、両太腿を抱えられながら手の五指を、貝殻のように男の指に絡め取られる。寝台に敷かれた敷包布に身体を縫い付けながら、真上から腰を振り落とすような体勢だった。
これではもう逃げるどころか、自分で身体を動かすことも出来ない。
「……む、らさめ……っ、ぼく は、逃げないから……っ」
だからこの体勢をやめてほしい。
そう言外に滲ませた言葉も、閨の中では艶事の一部だ。
くつくつと低く笑いながら、紫雨が勢い良く腰を落とした。ぐちゅり、ぐぽっ、と卑猥な水音を立てながら剛直を後蕾に何度も突き刺し、これでもかと最奥にある弁を抉るように刺激する。
「……っ、あ……、あぁ……──!」
いやいやと療が頭 を振れば、窘 めるように紫雨が療の首筋を噛む。
甘い痛みが広がって、いっとう上がる濡れた艶声が快楽を物語っていた。
「相変わらず……噛まれるのが好きか……かさい」
ああ、そんなの知らない。
だが療は香彩になりきって演技をする。
「んんっ……あ、好き……好きだからもっと……噛んで……っ!」
「……良い子だ。もっと噛んでやろう」
「──っ! は、ああっ……ぁ……」
「かさい……かさい……っ!」
再び首筋を噛まれながら、やがて激しくなる抽挿に胎内の奥で熱が育ち始める。理性は揺らぎ、ただ必死に彼を抱きとめることしかできない。
これでいいと、療は悦楽に呑まれていく片隅でそんなことを思った。
これで少しでも貴方が癒されてくれればいい。
紫雨が幻に縋ることで救われるなら、自分はいくらでも幻の代役になろう。痛みに縋る彼を慰められるなら、それでいい。全てが終わって彼が目覚めた頃には、全て夢として終わるだろうから。
途端に嫌だと叫び出した心を、療は心内で無残に踏み潰す。
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