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第18話 魔妖狩り 其のニ

 『魔妖狩り』と命名された集団だった。  見目の良い魔妖や希少な種族の魔妖を攫い、性的に仕込んでから色好みの好事家や国外の富豪層に売買する者達だ。  事件が明るみに出たのは、ある好事家の元から逃げ出してきた魔妖の少年が、宿衛兵に助けを求めたからだ。  攫われた魔妖は好事家の家に連れて行かれるまでの間、仕込みという名の陵辱が行われたことを語った。  仕込みの時に魔妖のみに効果があり、即効性のある強力な媚薬が使われた。自分は耐性があったのか心を壊されることはなかったが、自分と同じように浚われた者が自我を失い、やがて常に色を求めるようになってしまったという。  自分がどこに連れ去られたのか全く分からなかった。だが魔妖の少年は、他の者よりも鼻が効く性質を持っていた。『紅麗灯』の紅紙の燃える独特の匂いを嗅ぎ取って、辛うじて自分が紅麗にいること、紅麗のどこかで陵辱されているのことを知ったのだ。   (……まさかこの麗国で……っ!)    療は愕然とした。  麗国は、遥か古の時代に人と魔妖の争いに心を痛めた魔妖の王が、天から降りて造ったという謂われのある国だ。  そのおかげで魔妖は人と共存する道を得、今も魔妖の王が国を治めている。そんな国で魔妖を『商品』にするなど、正気の沙汰ではない。  麗城や紅麗を警護する、宿衛兵と呼ばれる者達の統括である『黎啓(れいけい)』療には、司官の長である大宰(だいさい)、紫雨から紅麗の警備の強化の下知が下った。  麗城を守備する宿衛兵から紅麗へ、何人ほど人が割けるのか、誰を行かせるのか。副官らと話し合い、その旨を紅麗の守備隊へと式を送る。  そして何度か紅麗に入り、実際の守備配置の確認が終われば、事が大きく動くまで役職として出来ることはもうなかった。  実際に紅麗の家宅や商店、遊楼の捜索を行うのは、別の役職の司官であり、紫雨の指揮下のもとに動いている。  魔妖の少年を買った好事家はすぐに拘束され、紫雨の命により処分された。御披露目と称して好事家と共に、淫猥な酒宴を楽しんだ他の好事家達も浮上し、彼らには重い刑が下ったのだという。  少年が保護されて僅か数日の出来事だった。  紅麗の警備強化そして捜索が行われた為か『魔妖狩り』は現在その鳴りを潜めている。魔妖の少年が証言していた仕込み場も見つかったが、すでに蛻の殻だった。   (……牽制にはなっているけど……でも『魔妖狩り』は奴等からすると金回りのいい商売だから、必ずまた動き出す)    紫雨も当然のことながらそう考えたのか、療へ紅麗の警備の更なる強化の下知が式文を通じて下る。  式文とは、鳥の形をしている式が触れることによって紙状に変化する文のことだ。     ──今宵、紅麗に。   「……っ」    文面の最後にそんな一文を見つけてしまって、療は思わず息を詰めた。  呼び出しだ。  

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