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第40話 艶夢虚ろう 其の十三

 波が引くように、昂ぶっていた熱が身体から引いていく。  だが、その後に残されたのは、骨まで染み渡るような冷たい、どうしようもない自己嫌悪だった。 ​ 吐き出されたばかりの白濁が、陰の掌や自分の下腹をどろりと汚している。その生温かい感触や匂いさえ、鼻を突く毒のように感じられて、療はぎゅっと瞼を閉じた。   ​(オイラ、本当に……今日初めて会った人の腕の中で……あんな……)   ​ 身体がまだ微かに震えているのは、絶頂の余韻のせいだけではない。一時だけでも、寂しさを埋めるために目の前の男に縋り、快楽に溺れてしまった自分自身の浅ましさが、哀しくて、惨めで堪らなかった。   ​「よく頑張りましたね。とても愛らしかったですよ」   ​ 耳元で陰がそう優しく囁きながら、労わるように療の頭を撫でる。たった今、自分の秘めた場所から熱を引きずり出し、慰めてくれた陰。確かに自分が求めていた「温もり」がそこにはあった。 ​ だがその優しさに包まれれば包まれるほど、胸の奥にぽっかり穴が空いて冷え切っていることを再認識する。 ​ 陰の指が髪を梳き、涙で濡れた頬をそっと拭った。  その温かさは本物で、自分を求めてくれている。それなのに、どれほど優しくされても、脳裏に浮かぶのは紫雨の面影ばかりだ。   ​(どんなに優しくされても……あの人の、あの冷徹で、不器用な熱の代わりには……)   ​ 快楽が去った後の冷えた頭は、その残酷な事実を嫌というほど突きつけてくる。     ──それでも。  ──もう、あの人の隣には戻れない。    ​ 紅の暖簾の向こうに消えていていったあの人への想いと寂しさに、胸が張り裂けてしまいそうだった。  ならばこの目の前の優しい男に縋って、滅茶苦茶に蕩かされてしまえばいい。寂しいと感じられなくなるくらいに、この男で埋めればいい。 ​ もうこのまま何もかも失って、この男の優しさに融けてしまおう。甘く揺さぶられて男の熱に縋って蕩けてしまえば、この胸を引き裂くような恋心を、ほんの一時だけでも忘れられる。 ​ そう自分に言い聞かせた療は、寝台の敷包布を握る指先にぎゅっと力を込めた。そんな療の手を宥めるかのように、陰の大きな手が包み込む。  自分を拒まない陰の優しさに救われるように、ゆっくりと敷包布から解かれていく療の指は、気付けば陰の指の隙間に絡んでいた。 ​ 陰は満足げに細い目を細めると、そっと療の足を開かせる。白く形の良い療の内腿の、きめ細やかな肌の感触を手の甲でしばらく楽しむと、双丘の奥へと指を忍ばせた。   「——あ……っ」  

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