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第5話

壱規は俺の腕を掴み店を出た。そのまま大通りにまで腕を引かれ道を行き交うタクシーに壱規が手を上げていた。 俺は掴まれた腕を払い、フラつきながら大通りを歩いた。 「おいって、邦正! どこ行くんだ! 」 「うるさい! 俺の勝手だろ……」 「啓介と環が心配してる」 「うるさいっていってるだろ! おまえが最初に俺を捨てたくせに! うわ!」 よろけた俺を壱規が抱き寄せた。こんな風に抱きしめられたのは久しぶりだった。俺は酔いに任せ、壱規を困らせたくなった。 「……キスしたら帰ってやってもいい」 馬鹿だ俺……壱規がする訳ない…… え……? 壱規の顔が近づくと唇に触れた。後頭部を持ち上げられ深く口づける。チュっと唇を吸われ、また深く口づけた。 驚いた俺は、壱規から離れ睨みつけた。 「……な…にすんだ!」 「キスしたら帰るって言ったじゃないか」 「……だからって」 こんなキス…… 「じゃ……俺とエッチしようっつたらやんのかよおまえは!」 「お望みなら……」 「なっ!」 クッソ! 笑いやがった! 「ほら、タクシー乗るぞ」 「ああ〜〜もうっ!」 壱規に促されるままタクシーに乗り込んだ。

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