5 / 11
第5話
壱規は俺の腕を掴み店を出た。そのまま大通りにまで腕を引かれ道を行き交うタクシーに壱規が手を上げていた。
俺は掴まれた腕を払い、フラつきながら大通りを歩いた。
「おいって、邦正! どこ行くんだ! 」
「うるさい! 俺の勝手だろ……」
「啓介と環が心配してる」
「うるさいっていってるだろ! おまえが最初に俺を捨てたくせに! うわ!」
よろけた俺を壱規が抱き寄せた。こんな風に抱きしめられたのは久しぶりだった。俺は酔いに任せ、壱規を困らせたくなった。
「……キスしたら帰ってやってもいい」
馬鹿だ俺……壱規がする訳ない……
え……?
壱規の顔が近づくと唇に触れた。後頭部を持ち上げられ深く口づける。チュっと唇を吸われ、また深く口づけた。
驚いた俺は、壱規から離れ睨みつけた。
「……な…にすんだ!」
「キスしたら帰るって言ったじゃないか」
「……だからって」
こんなキス……
「じゃ……俺とエッチしようっつたらやんのかよおまえは!」
「お望みなら……」
「なっ!」
クッソ! 笑いやがった!
「ほら、タクシー乗るぞ」
「ああ〜〜もうっ!」
壱規に促されるままタクシーに乗り込んだ。
ともだちにシェアしよう!