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第9話
就職して半年以上、邦正と連絡が取れなくなっていた。もうダメだと思いながら邦正からの連絡を待っていた。
俺の事情を知っている腐れ縁の女性に呼び出された。塞ぎ込んでいる俺を見兼ねたらしい。そして彼女もある事情で悩んでいた。
いつもは明るくて笑顔の彼女が弱っていて、彼女を守ってやりたいと思った。彼女とならずっと一緒に居られると……俺は彼女に結婚を申し込んだ。俺の事情を知った上で、彼女は俺との結婚を承諾してくれた。
邦正を呼び出し俺は結婚する事を告げた。あいつは今まで何も言わなかったのに……
最後に言おうとするなんて今更だと遮った。それでも期待していた好きだって言ってくれる事を……
「……分かった」
邦正はそのまま部屋から出て行った。
あ……終わったんだ俺達……
「邦正…俺は…っっ!」
邦正は戻って来なかった。心では違う人を思っていても他に安らげる場所が欲しいだなんてそんな自分が最低だと思った。
これじゃ…俺に無関心なあの人と変わらないじゃないか……そして兄よりも俺よりも可愛がるあいつが心底憎い……
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