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小ネタ 魅惑の赤ちゃんプレイ(第8.5話)★
午後の陽射しが強くなるころ。湊は野田とともに、キャンパス内のカフェテラスで涼んでいた。
冷たい飲み物を手にしながら、他愛ない会話をしていたのだが、
「ああ、オギャりてえ~」
脈絡もなく、野田がストローを噛みながら呟いた。
「え?」
「この前、彼女に言ったらドン引きされたんだよなあ」
「へー、そうなんだ……」
聞き間違いかと思ったが、野田は真顔で続ける。
湊は短く相槌を打ちながらも、内心では「そりゃそうだろう」と彼女に同情した。
「くっそー、彼女に甘やかされるとか最高じゃね!? ガチで赤ちゃんプレイとかしてえわ!」
「んーまあ、甘やかされるのもいいと思うけど。俺はどちらかと言えば、甘やかしたい派かな」
「ええーマジかよ?」
言葉を濁したのは、後が面倒になりそうだからだ。ただ、「恋人に甘えたい」という点に関してはわからないでもない。
野田の思考はやや行き過ぎな気もするが――いや、春陽だったら。
「………………」
……気づけば、湊はありもしない光景を思い描いてしまっていた。
『よしよし、いい子いい子。湊くんはいい子だね♡』
脳裏に浮かぶのは、母性を感じさせる春陽の微笑み。
頭を撫でてくる仕草があまりにも自然で、湊の胸がじんわりと熱を帯びていく。
野田の言葉に感化されてしまったのか、妄想はそのまま膨らんでいった。
『うん? お腹空いちゃった?』
春陽は小首をかしげると、頬を赤く染めながら、そっとYシャツのボタンに指を添える。
『じゃあ……ママのおっぱい、飲む?』
乱れていく襟元、のぞく白い鎖骨。そして、じゅわ……っと濡れた桃色の突起。
ほのかに甘い匂いが鼻腔をくすぐる。潤んだ瞳で見つめられれば、それだけで息が詰まりそうだった。
『いっぱい飲んでいいからね? ほら、ちゅーちゅーして……♡』
囁くような声音にドキリとする。
いったいどのような味がするのだろう。欲望のままに吸えば、きっと身も心も満たされるに違いない。
春陽はこちらの頭を抱いたまま、自ら胸を寄せてくる――唇が触れそうなほど近づいたところで、
「いやいやいや……やめて、やめて、ガチでやめて。変な方向に目覚めちゃいそうだから、本当にやめて……っ」
湊は両手で顔を覆い、椅子ごと大きく仰け反った。
一方、野田はきょとんとした表情を浮かべる。
「えっ、なに? イケる? そーゆーの案外イケるクチだった!?」
「……野田と一緒にすんな。そもそも解釈違いだし」
「はああっ!?」
湊は必死になって、真っ赤になった顔を隠した。
そして胸の内で、春陽に「ごめんなさい」と繰り返し謝る。
この妄想を本人に知られたら、間違いなく死にたくなるに違いない。
……というか、死ぬ。死んでもいい。
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