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番外編 巣作りオメガと初夜♡(2)★

 実のところ、これまで二人はキスまでしかしてこなかった。  きっと互いに、タイミングを見計らっていたと思う。けれど――もっと愛し合いたいという気持ちを抱えながらも、なかなか踏み出せないままでいた。  優の存在があったからというのは勿論だけど、それも言い訳といえば言い訳かもしれない。  気づけば、付き合い始めてから二ヶ月半が経っていた。  この距離が愛おしくて、ドキドキして。でもどこか、もどかしいようで……。 「コンビニならまだ開いてるし、なんか買い物とかあったら――」 「あ、そのっ」  遮るようにして、春陽は声をかけた。  躊躇いながらも、相手の方へ顔を向ける。ややあって唇が動いた。 「薬、あんま効かなくて……つらいから……楽にして、ほしい」  湊が小さく息を呑むのがわかった。表情を引き締めると、声を落として尋ねてくる。 「いいの? 俺、本気にするよ?」  無言でこくこくと頷く春陽。  すると湊は、春陽の身体を引き寄せ、やんわりと抱きしめてきた。  春陽はどぎまぎしつつも身を委ねると、その大きな背中へと腕を回す。 「……湊くんと、もっと触れ合いたいなって。ずっと思ってたんだ」  素直に打ち明ければ、湊は少し驚いた様子を見せた。  一拍置いてから、同じように言葉を返してくる。 「俺も、同じだった。ずっと春陽さんに触れたくて……でも、タイミングとか間違えたくなかったし」  やっぱり、と思った。まるで気持ちが通じ合っているみたいだった。  どちらからともなく身体を離し、至近距離で見つめ合う。  自然と、唇と唇が重なって――そこからはもう、なし崩し的だった。湊は春陽をベッドへ押し倒し、そのまま覆い被さってくる。 「ん……っ」  触れるだけだった口づけは、やがて熱を帯び、舌を絡ませ合うものへと変わっていった。もはや互いに、はやる気持ちを抑えられない。 「……俺、初めてだから。優しくできなかったら、ごめん」  息継ぎの合間に、ふと湊が口にした。  まったく彼らしいというべきか。春陽は口元に笑みを浮かべて返す。 「優しくなくて、いいよ」  その言葉が、湊という男を一瞬で煽った。 「俺が普段、どれだけ我慢してるか――春陽さん、わかってないでしょ」  低い囁きにぞくりとするのも束の間。部屋の照明が落とされ、ベッドのスプリングが静かに軋んだのだった。  結論から言おう。やはり湊は優しかった――いや、しつこいほどに優しすぎた。 「湊くん、もう……いいからあっ」  全裸にさせられて、身体のいたる所にキスマークを刻まれて。仰向けのまま、春陽はひくりと喉を震わせる。  ……これはもう、焦らされているとしか思えない。  こちらに反して、まだ湊は一枚も服を脱いでいない状態。先ほどから延々と、湊の指や唇が、春陽の身体を愛撫し続けている。  一番欲しいだって、指が緩く出入りするだけで、決定的な刺激を与えようとはしてくれない。 「春陽さん、可愛い。いっぱい可愛がってあげたい」  秘所をまさぐる指はそのままに、春陽の昂ぶりへと顔を寄せてくる湊。  男同士だというのに、なんの躊躇いもない。柔らかく口づけたのちに、つうっと舌の先で裏筋を舐め上げてきた。  その刺激に、春陽はビクンッと腰を跳ねさせる。 「ひ、あっ! おちんちん、だめえ……っ」 「ふふ、はそんな可愛い言い方するんだ?」  湊が甘い声でからかってくる。  が、次の瞬間には一転して、より愛撫を深くしてきた。春陽のものを咥え込み、口内でねっとりと刺激を与えだす。  オメガのそこは完全に成熟しきらず、一般的なそれよりもいささか小さい。あっという間に根本まで咥えられて、春陽の顔が余計に赤く染まった。 「あっ、や……あぁ」 「嫌じゃないでしょ。ほら、ちゃんと気持ちよくなってる」  春陽のものを咥えながら、湊がもごもごと声をかけてくる。  頭を上下させ、じゅるるっ……と水音を立てながら吸い上げられ、春陽は堪らず湊の頭へと手を置いた。  しかし、引き剥がそうにも手に力が入らない。それどころか、もっとしてほしいとねだるように、腰を揺らしてしまう始末だった。 (やだ、恥ずかしいのに……腰、とまんない……っ)  そんなこちらの反応を、湊が見逃すはずもない。一気に高みへ追い立てるかのように、口淫が激しさを増した。  絶頂がすぐそこに迫る。春陽は目を潤ませ、湊の頭を抱え込む形で喘いだ。

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