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番外編 巣作りオメガと初夜♡(4)★
「あっ、あぁっ」
雁首の一番太い部分さえ呑み込んでしまえば、あとはもうスムーズだった。待ち望んでいた熱に歓喜するように、春陽は喉を震わせる。
そのうち、湊のすべてを受け入れていた。繋がり合ったところから、ドクンドクンと脈打つ鼓動が伝わってくる。
「全部、挿入 った……春陽さん、苦しくない?」
背後から抱きしめながら、湊が気遣わしげに尋ねてきた。
はあはあと息を乱しながらも、春陽はこくんと頷いてみせる。凄まじい圧迫感はあったが、それ以上に幸せだった。
「んっ……おっきいの、奥まできてる……おなかいっぱいで、うれし……」
熱に浮かされたように言うと、体内で湊の質量がさらに増した。春陽は驚きに目を見開く。
「えっ、あ……また、大きく……っ!?」
「っ、春陽さんが煽るからでしょ」
湊が気まずそうな声を漏らす。
発情期 中でなければ、もっと気の利いたことを言えたかもしれない。ただ、今の春陽の頭では何も考えられなくて、オメガとしての本能に突き動かされるまでだった。
「だ、だって……これ、すき――……ね、動いて……?」
顔だけを後ろへと向けて、うわ言のようにねだる。尋常ではない春陽の様子に、湊は軽く喉を鳴らしたのち、ゆっくりと腰を引いていった。
ずるずると体内から引き抜かれていく感覚に、春陽は身を震わせる。
そうして、抜け落ちるかと思われた瞬間。勢いづけて体内へと押し入ってくる衝撃に、甲高い悲鳴が上がった。
「あああぁっ……!」
全身を痙攣させるようにして、またもや絶頂を迎える。内壁がきゅううっと収縮し、湊の欲望をきつく締め上げた。
湊は一瞬だけ息を詰めたが、それでもお構いなしだ。こちらの腰を抱え直すと、絶頂の余韻に浸る間もなく、律動が開始される。
「んあっ、あ、ん……あぁっ」
内壁を容赦なく擦り上げられ、春陽は髪を振り乱して身悶えた。
最初は緩やかだった動きも、徐々に激しさを増していき、パンッパンッという肌と肌がぶつかる音が響くようになる。
オメガ特有の子宮口に、勢いよく先端が叩きつけられれば、もう堪ったものではない。頭の中が真っ白になるほどの、強烈な快楽が波となって襲ってくる。
「あっあ、おく……っ、おく、すごい……きもちいいっ」
「奥? 奥がいいの?」
「うあっ、ん、あっ……あ!」
心のままに訴えれば、湊は執拗にそこばかりを責め立て始めた。力強い抽送を受けるたび、チカチカと目の前に火花が散る。
先ほどから繰り返し、絶頂を迎えているというのに――なおも貪欲なそこは、決して湊のものを離すまいと必死に絡みついていた。
春陽はとうとう四つん這いすら保てなくなって、突っ伏してしまう。
「あっ、あ、いい……っ、きもち、いい……!」
「うん、気持ちいいね。春陽さんのナカ、もうトロットロ……俺も、すげえ気持ちいい」
「ん、うぅっ」
耳元で甘く囁かれ、耳朶をねっとりと食 まれる。それだけで、春陽のそこからはまた愛液が溢れ出した。
ずちゅっ、ぬちゅっ……という淫らな水音はもはや止まず、否応にもさらなる興奮を煽ってくるようだ。
(きもちいい、きもちいいっ……すき、すき――ここ、も……ほしい……っ)
熱に浮かされた指先が、不意に首元をなぞる。
そこにあったのは、湊からプレゼントされた革製の黒いチョーカー。留め具の部分を指先で弄り、忙しなく音を鳴らす。
意識が混濁して、頭はすっかり蕩けきっていた。だけれど――、
「ん、はっ……みなとくんっ――うなじ、して……また、ちゅーしてえ……っ」
決して、「噛んで」とは言わない。
それは湊の中にある決意であり、二人の大切な境界線なのだから。たとえ本能にのまれても、その想いだけは尊重したかった。
「いいよ。何度だって、痕残してあげる」
静かな声が落ちると同時に、うなじに温かな感触が降ってくる。力強く吸いついた湊の唇が、痕を刻んでいくのがわかる。
「ふあっ、あ、ああぁ……っ!」
痺れるような感覚に、春陽の身体が大きく痙攣した。
本能が悦んでいる。決して噛まれたわけではないけれど、彼こそが自分の番 なのだと、どこかで確信しているようだった。
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