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第5話 口にされるの、こんなに気持ちいいなんて
リビングには、テレビのゲーム音とエアコンの静かな風の音だけが漂っていた。
有馬の鼓動は喉元までせり上がってきそうなほど速くなり、逃れようと小さく身をよじるが、一ノ瀬に押さえられ、ソファへと倒されてしまう。
一ノ瀬は自分のネクタイを緩め、シャツのボタンをいくつか外した。そのまま有馬の唇へと再びキスを落とす。
一気に頭がぼんやりしてきて、有馬はなすがままになっていた。一ノ瀬の手がTシャツ越しに身体を這い、やがて胸元へと辿り着く。
指先が乳首を捉えると、じわじわと柔らかく揉まれた。
酸素が足りなくなったせいか、有馬の喉が上下に震え、微かに甘い声が漏れる。
昨日の出来事を思い返せば、羞恥よりも…何故か、心が熱くなる。
一ノ瀬が有馬のズボンを下ろすと、すでに昂ぶったそこが可愛らしくピクピクと跳ねた。
唇を離した時、二人の口元にはまだ艶めいた糸が繋がっている。
一ノ瀬は有馬の火照った頬をつまんで、「お前の頭ん中、何考えてるかくらい分かるんだけど」と悪戯っぽく笑った。
そう言って一ノ瀬は有馬の脚の間に跪き、長い指でそこを優しく持ち上げる。
その直後――冷たい感触が肌を撫で、有馬の身体がびくりと跳ねた。
「ま、待って――っ……!」
慌てて声を上げるも、すでに遅い。一ノ瀬の舌が、ゆっくりと敏感な部分をなぞっていく。
手で口を塞いでも、どうしても漏れてしまう吐息と甘い声。
そのまま、一ノ瀬の舌が縁をなぞるたびに、小さな痺れが下腹部に広がっていく。有馬は恥ずかしさのあまり目を逸らし、思わず腰を浮かせてしまった。
「我慢できないの?」
「う、うるさいっ……ん、あ……っ」
舌が滑らかに這う感触に、理性が次第に削られていく。
ただ触れられているだけなのに、どうしてこんなにも気持ちいいのか――
「……は、ぁっ……や、やめ、っ……っ」
けれど、一ノ瀬はやめてくれなかった。熱を帯びた吐息とともに、唇で優しく包み込み、舌先で敏感なところを執拗に刺激する。
意識が遠のきそうな快感に、有馬の喉から不規則な声が溢れる。
「どっちが好き? 舐められるのと、咥えられるの……」
「――し、知らないっ……!」
混乱の中、一ノ瀬に導かれるまま、有馬は自分の手でそこに触れさせられる。
何がどうなっているのか分からないまま、ただ、目の前の舌が自分の指先に絡んでくるのを見ていた。
ぬるりとした感触が、甘く、熱く、どうしようもなく心地よい。
気づけば、有馬の腰がほんの僅かに前へと傾いていた。
それは――自ら、一ノ瀬の中へ入っていったのだ。
一ノ瀬の唇がわずかに緩み、まるでその行動を褒めるかのように、太ももを撫で始める。
鍛えられた筋肉の曲線に沿って、優しく掌を這わせながら、その深部を口内でゆっくりと迎え入れていく。
水音が静かな部屋に小さく響き、有馬は震える手を一ノ瀬の頬へと伸ばす。
唇の動きが、そのまま肌を通して伝わってくるような錯覚に、頭の奥が痺れる。
そっと耳のあたりに触れた指先が、その冷たさを感じ取る。滑らかな耳の形をなぞりながら、有馬はもう、自分の感覚すべてが崩れていくのを感じていた。
――気持ちよすぎて、何も考えられない。
ぎゅっと目を閉じた瞬間、熱が一気に解き放たれた。
有馬の身体が跳ね、息が漏れ、微かに掠れた声が喉の奥から零れる。
一ノ瀬はそれをすべて、何ひとつ拒まずに受け止めてくれた。
しばらくして、ふぅ、と穏やかな吐息と共に一ノ瀬は口を離す。
視線の先には、恍惚とした表情でソファにぐったりと横たわる有馬がいた。
「……まだ、こんなに気持ちよさそうな顔して……」
一ノ瀬の手が有馬のTシャツの裾から腹筋の辺りをなぞるように上がり、再び胸元に触れる。
先ほどの余韻を引きずるように、指先で乳首を軽く撫でると――
「ん……っ」
もう力の入らない有馬の唇から、小さな声がこぼれる。
その様子に、一ノ瀬の中で何かが切れてしまった。
「……これ以上挑発されたら、本当に我慢できなくなるよ?」
しかし、もう理性などどこにもない有馬は、目を閉じたまま、唇だけをわずかに動かしてこう言った。
「……じゃあ……やってみれば?」
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