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#06
傾いた日差しは教室をオレンジ色に染めていて、そこにいる透也がとても綺麗だった。
「なんかこうして話すの久しぶりじゃん、話って何?どした?」
出会った頃と同じように笑って、優しい声色で言う。
それがどうしても悲しい。
その優しい声は僕だけのものじゃなくなってしまったんでしょ?
僕だけが変わって透也と同じ気持ちで笑えずにいる。
「――…僕さ、最近なんかおかしいんだ」
「ん、うん…気付いてはいた、けど…」
けど――、その先に続きはなくて沈黙だけが続く。
「僕ね、透也のことが好き」
沈黙を破ったのは僕の言葉。
透也の表情は読めない。まっすぐ僕を見ているようで、僕の肩の先にある夕陽を見ているようにも見える。
透也の頬がオレンジに染まっているのは夕陽のせいか、それとも。
「ねぇ」
透也の手を掴むと反射的に離そうと手を引くその手を更に強く握った。
「なんで僕じゃだめだったの?」
透也は何も言わない。
ただ怯えたような、物悲しい目で僕の目を見るだけ。
「ごめんね。彼女ができたこと、おめでとうって言ってあげられなくて」
透也は驚いた顔をしたけど、何も言わなかった。
振りほどくことも繋ぎ返してくることもしない透也の手を最後にぎゅっと握ったあとに離して、教室を出る。
当たり前に追いかけてくることはない。それが少しだけ悲しい。
僕はこれで良かったのか。その答えは分からない。
透也だってきっと答えは持ち合わせていない。
誰にも分からない答えは夕陽に溶けて消えた。
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