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美しい、柏 暁斗。
昴は、彼のことを美しいと感じていた。
乗馬をしようかな、と考え出したのも、彼がきっかけだ。
以前、やけに気の荒い馬が、馬場へ連れてこられたことがあった。
厩務員も手を焼き、ついには手綱を振り払い逃げ出そうとしたのだ。
そんな暴れ馬を瞬く間に鎮め、鞍も掛けずに颯爽と走りだした暁斗を、昴は見た。
彼は、うっとりするほど素敵だった。
長身に、引き締まった逞しさを持つ体。
一つに束ねた、漆黒の長い髪。
切れ長で、黒曜石のような瞳。
美しいのは、姿かたちばかりではない。
その気質も、昴の心に響いた。
凛々しく、真っすぐな彼の性分は、とても小気味いい。
第二性がアルファだけあって、実に有能な働きぶりだ。
それでも才能に甘んじることなく、常に鍛錬を積む熱心さを持っている。
そして、その声。
彼は饒舌ではないが、響く低音は耳に心地よかった。
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