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 驚いたのを気取られなかったかな、と昴は赤くなった。 (馬場にいた時から、ずっと見られていたのかな?)  焦る昴を知ってか知らずか、暁斗はのんびりと話しかけてきた。 「昴さまは、馬に鼻を擦りつけられた事があられますか?」  あるわけがないじゃないか、と昴は思った。  馬の鼻先は、いつも湿っていて美しくない。  あの濡れた鼻面を擦りつけられるなんて、御免だった。  それに、そこまで馬に近づいたことさえ、なかった。  無言で首を横に振る昴に、暁斗も黙って笑顔を向けた。  そうでしょうね、と語らずとも伝えてくる。  人に笑われる事は嫌いな昴だったが、暁斗の笑顔は好きだった。  馬の鼻面を毛嫌いしている自分を、馬鹿にするでもなく、責めているでもなく。 (暁斗が持つ、独特の笑顔なんだろうな)  そう思うと、つられるように笑顔がこぼれた。  昴は、暁斗に素直な微笑みを返すことができた。  今度は、暁斗が驚く番だ。  昴の笑顔に、目を見張った。 (昴さまが、こんな表情を?)  驚いた後は、嬉しさがこみ上げてきた。  昴に優しい笑顔をもらったことを、心から嬉しく思った。

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