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ゆったりとした時間が、流れる。
会話が無くても、癒される。
そして昴には、恋心のドキドキが生まれてくる。
「ね、暁斗。今度……」
昴が勇気を振り絞って、暁斗に話しかけようとしたその時、放牧場の柵内が騒然とした。
馬の親子へ、激しい勢いで別の大きな馬が突進してきたのだ。
「た、大変だ! 親子が、蹴散らされる!」
「いや、これは大丈夫でしょう」
「そんなこと言ったって!」
うろたえる昴と違い、暁斗は余裕で馬の様子を眺めている。
大きな馬は右に左に、前に後ろにと親子の周囲をうろついていた。
やがて後足二本で立ち上がると、母馬の背後から乗りかかった。
激しいいななきと、乱れる蹄が青草を踏み散らす。
仔馬は悲鳴を上げ、パニック状態になっている。
そして、いきなり現れた牡馬は、やがて母馬と交尾を始めたのだ。
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