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「な……ッ、何てことを!?」  昴の目の前で繰り広げられた、衝撃的な光景だった。  何て恥知らずな!  美しいと思っていた馬も、所詮はただの獣だったのか!  だが、憤り、恥じ入る昴の耳に、やけに軽やかな笑い声が聞こえてきた。 「よしよし。励んで、名馬を産んでくれよ」 「暁斗!?」  見ると、隣の暁斗は楽しそうにそれを眺めている。  馬とはいえ、目の前にセックスを突きつけられたというのに、だ。 (驚かないのか!? 不快じゃないのか!?)  昴は、心の中で大声を上げていた。  そして、その思いは心の中だけでなく、実際に外へとほとばしった。 「暁斗は、おかしいよ!?」 「はて。何が、おかしいのでございますか?」 「あ、あんな、いきなり! 馬とはいえ、相手に失礼だ!」  きょとんとしている暁斗に、昴は思いを訴えた。 「僕なら、まずはバラの花を贈る! そして、初めはキスからで。それも、ちゃんと同意を得る!」 「そうですか」  しかし、やはり暁斗は笑うだけだ。  穏やかに、微笑むだけだった。  

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