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暁斗の余裕が、昴には憎らしかった。
(僕より、ずっとずっと大人の素振りなんかしちゃって!)
馬の交尾に真っ赤になって、必死に熱弁している自分が、やけに恥ずかしい。
やがて、二頭の馬は離れた。
そして、後はもう何事もなかったかのように、のんびりと過ごし始めた。
(いいの? これで終わり? これで、いいの!?)
これが動物の持つ、おおらかさなのだろう。
仔馬も母馬の隣に戻り、じゃれている。
その無邪気な姿に、昴の気持ちはようやく落ち着きを取り戻しかけた。
しかし、そこへ暁斗が、またとんでもない事を言ってきた。
「そういえば、私も最近ご無沙汰です。今夜あたり……」
「え……!?」
昴は、息を飲んだ。
あんまり速く飲んだから、甲高い音が出たくらいだ。
(うッ、馬の交尾に触発されて、劣情を抱くなんて!)
そんな昴の憤りも、暁斗には伝わらない。
それどころか、彼は昴を誘ってきたのだ。
「どうです? 御一緒に」
「な、なッ、何だって!」
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