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 さて、と。  そんな風に、暁斗は心の中で踏ん切りをつけた。  そうでもしなくては、もう永遠にこのまま時を止めてしまいたくなる。  ベッドサイドのティッシュペーパーで、濡れた昴の下肢を清めた。  まだ胸を大きく上下させて喘いでいる昴は、されるがままに身を任せている。  ていねいに体を拭いてくれた暁斗の手が、ふと居なくなった。 「暁斗……?」  昴は、ようやく焦点の合ってきた目で、彼を探した。  暁斗は、ベッドから離れていた。  こちらに戻ってくる彼の手には、ペットボトルがある。 「水をどうぞ」 「……うん」  こくこくと小さく動く昴の白い喉に、うっすらと紅い痕が残っている。  その色に、暁斗は深い満足感を覚えていた。  あれは、私が付けた。  私の刻印。  苦しいほどの愛しさが、胸に込み上げてきた。  私の下で、悦い声で啼きじゃくっていた、まだ幼さの残る大切な主。 (そう。主だ。昴さまは、私の主人)  愛しい。  だが、決して添い遂げられない運命の人なのだ。  暁斗は、深く頭を下げた。 「大変、失礼いたしました」 「……」  昴は、無言でうつむいてしまった。  沈黙は、千の言葉に匹敵する時もある。  暁斗は敢えて、返事を求めなかった。

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