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「暁斗」
「はい、何でしょうか」
「その、よかったら、僕が。君がしてくれたように、手を使って……」
「ぅん……」
「暁斗?」
昴の耳に、安らかな寝息が聞こえてきた。
暁斗は、早々に眠ってしまったらしかった。
「お返しに、僕が手でしてあげようと思ったのに」
だが、ホッとしたことも事実。
自慰すらも、美しい行為ではない、と考えている昴だ。
そんな彼にとっては、手で施すのも難しいところだった。
一方、気持ちだけで充分だ、と暁斗は思っていた。
寝たふりをして、気恥ずかしさをごまかした。
(その綺麗な指で、私の性器に触れるなんて。そんなお気の毒な事は、させられませんよ)
昴さまの初めてをいただけただけで、満足です。
後は、昴の吐く息が、規則正しく落ち着くのを待って、寝た。
果てたわけでもないのに、やたら心は豊かに潤っていた。
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