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「馬は、良いでしょう?」
「彰斗!?」
突然かけられた声に、昴は驚いた。
いつのまにか、暁斗が隣で微笑んでいるのだ。
そんな彼には、昴の表情が誇らしげに見えた。
(やはり昴さまは、美しい。その伸びやかな心は、毎日磨かれているんだな)
しかし、立派なはずの昴は、ただ無邪気な笑顔を暁斗に寄こした。
「馬に触れることが、できたよ」
「大きな進歩です」
早く、馬に乗ってみたいな。
風を切って、走ってみたい。
そんな思いを巡らす昴に応えるかのように、暁斗が動いた。
おとなしくしている馬に、ひらりと一息で跨ったのだ。
「昴様も来られますか? 御一緒に」
暁斗の手が、昴に差し伸べられた。
『昴さまも、お休みになられますか? ……御一緒に』
昨夜の、暁斗の言葉と被って、昴は頬を染めた。
どうしようかな。
迷ったのは、ほんの一瞬。
昴は暁斗の手を借り、軽やかに馬に飛び乗った。
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