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厩務員たちが、喜びの声を上げた。
「行ってらっしゃいませ!」
「柏さん、昴さまを落とさないようにね!」
「お気をつけて!」
昴は彼らに手を振り、応えた。
暁斗は短く、こう伝えた。
「うん。放牧場を一回りしたら、戻る」
馬に跨った暁斗の前に、昴は座った。
蹄の音とともに、振動が体に伝わってくる。
跨いだ脚に、馬の体温が伝わってくる。
その動きも温もりも心地よく、昴は晴れやかな気持ちになった。
今なら、素直な気持ちをそのまま、口にすることができる。
後ろを振り仰ぎ、昴は手綱を取る暁斗に声をかけた。
「ねぇ、暁斗」
「はい」
「続きは、いつ教えてくれるのかな」
「続き、とは」
「昨夜の、続き。教えてくれるよね? 楽しみにしてるよ」
「な……ッ!?」
みるみる赤く染まっていく、暁斗の顔だ。
視線が、落ち着きなく泳いでいる。
(やった! ついに、暁斗を凹ませてやったぞ!)
昴は、この上なく愉快だった。
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