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「駆けます!」 「え!? わぁ!」  返事の代わりに、暁斗は馬を走らせた。  速く、さらに速く。  心と共に、駆けた。 「ぅわぁ! すごい、すごい!」  昴は、ただひたすらに喜んだ。  景色が飛ぶ。  地を蹴る衝撃を、体に受ける。  風を切って駆ける、この爽快感を味わった。 「暁斗!」 「はい!」 「暁斗ぉッ!」 「はい、昴さまッ!」  馬上の二人にしか聞こえない叫びは、風に乗ってたちまちのうちに消えていく。  しかし、互いを呼び合う心のつながりは、決して簡単には消えなかった。  二人は確かに、これから起こる何かの予感を、胸にいだいていた。

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