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「いや、違う!」
昴は左の腕を目の高さにあげ、手にしたバラの花びらで強くこすった。
今日の午後、彼は調べ物をするために屋敷内の図書室へ行った。
その時、司書を務めている脂ぎった中年男に、この腕を触られたのだ。
『相変わらず、お美しいですなぁ。昴さま』
「そう言うと、僕が喜ぶとでも思っているのか!?」
汗で湿った、司書の太くて丸い指が、本を手にした昴の甲に重ねられ、そのまま上へ滑っていって撫でまわしたのだ。
肌が粟立つ思いがした。
一介の司書とはいえ、昴の3倍近く年を重ねた年長者だ。
だから、一睨みするだけで許してやったのだ。
正直、クビにしてやりたいくらい不愉快だった。
快楽とはほど遠い、嫌悪感しかなかった。
「やっぱり、相手によって気持ちは変わるらしいな」
今日に限って、半袖の服を身に着けていたことも迂闊だった。
美しいこの僕の白い腕を見たら、誰でも触れたくなるに違いないのだ。
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