57 / 226

20

「暁斗……」 「何でしょうか」  ほぅ、とまだ興奮の冷めない熱い息を吐いて、昴は切れ切れにささやいた。 「そのうち、僕も暁斗のものを、飲むことが、できるようになるかな」 「そんな事は、昴さまにさせられません。私が好きでやったことです」 「暁斗は、あんなものを飲むのが、好きなのか?」 「昴様のものだから、飲んだのです」  そこで、昴は暁斗の目を覗き込んできた。  雲が月にかかったのか、わずかに光が弱まった。 「なぜ、僕のものなら飲めたんだ?」  少し考えた後、暁斗は先程の昴の言葉をそのまま返した。 『僕は、暁斗のことが好きなのかな』  こんな問いかけをしてきた、昴。  暁斗もまた彼を真似て、言った。 「私は、昴さまのことが好きなのでしょうか」  見つめてくる昴の目が、円くなる。  暁斗の頬が、熱を持った。 (月が陰ってくれてよかった。こんな事、明るい中ではとても言えない)  照れた暁斗への昴の返事は、嬉しいものだった。 「僕は暁斗が……好きだ、と思う。多分……」 「ならば、私も昴さまが好きなのでしょう。多分」  昴と暁斗は顔を見合わせ、微笑んだ。

ともだちにシェアしよう!