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「さて。もう休みましょうか」  暁斗は、ベッドの端の方へ体をずらした。  昴が果てると、その夜の情事は終了。  そんな、暗黙の了解が決まっていた。  暁斗ルールが、作られていた。  だが昴は、次第に考えるようになってきた。 (僕ばかり出させてもらって、暁斗はこのままでいいのかな)  チラ見すると、彼の性器は張り詰めているのだ。  浴衣の上からでも解るように、頭をもたげているのだ。  何だか、暁斗に悪いことをしている気がする。  そう思いながらも、昴は口に出せないでいた。  そして寝入る前の、いつもの言葉を掛けた。 「ね、暁斗」 「はい」 「明日の夜も、会ってくれるかな」 「申し訳ございません。明日の夜は、所用がございます」 「そう。だったら、別にいいよ」  自分は暁斗が好きなのだ、と自覚してから、昴は頻繁に彼の部屋を訪ねるようになった。  好きな人の傍には、いつだって寄り添っていたい。  そして、それが普通なんだと思っていたから。  だが、情事の翌日には、暁斗はなぜか会ってくれない。  日中には職務で顔を合わせるが、夜はダメだ。  必ずと言っていいほど、拒んでくる。 (……なぜかな?)  こう度重なると、昴も気づく。  そして、理由を知りたくなる。 (この僕と会えないほどの用事、って。何なんだ?)  気にはなるが、訊けば疑い深く、嫉妬深いと思われそうだ。  だから、黙っていた。  プライドが許さない。  それに、暁斗には暁斗の事情があるに違いない。  いろいろと考えるのも疲れるので、昴はそのまま目を閉じた。  暁斗の胸の中で、ゆっくり眠りについた。

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