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昴が暁斗と熱いひとときを過ごした翌日、ディナーの締めくくりにブドウが出された。
「こちら、デザートのルビーロマンでございます」
「わぁ、粒が大きいね!」
「はい。一粒が30g以上の、Gクラスとなっております」
「それは、買い付けが大変だったろうね。ありがとう」
「あ、ありがとうございます……!」
昴は、使用人にもこんな風に、すらりとお礼が言えるようになっていた。
言われた方は皆、まずは驚くのだが。
(昴さまが、私などに労わりのお言葉を!?)
「全部食べられそうもないな。このブドウ、残りは僕の部屋へ持って行ってもいい?」
「……」
(昴さまが、私などに労わりのお言葉を……!)
「もしもーし?」
「あ、はい! はい、どうぞお持ちください!」
使用人は、慌ててブドウの残りを、新しいテーブルナプキンで包んだ。
それを受け取ると、昴は首を少し傾げてみせた。
「ごめんね。今度また大きなブドウが余ったら、その時は君たちにおすそ分けするから」
「え……は、はい! ありがとうございます!」
使用人は、やはりまた『昴さまが、私などに労わりのお言葉を……!』と感激していた。
そんな彼や他の使用人たちに、ひらりと手のひらを振ると、昴はダイニングから退出した。
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