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昴が向かった先は、自室ではなく執事の間。
「このブドウ、暁斗にも分けてあげよう!」
大好きなブドウは、以前なら全部独り占めして食べていたところだ。
それを、愛しい人に分けてあげようというのだ。
「なんて出来た恋人なんだろう、僕って!」
浮き浮きとした足取りで、昴は暁斗の部屋を訪ねた。
ドアをノックしても、何も反応が無い。
「でも、もう慣れちゃったもんね」
こんな時は、彼が手を離せない時なのだ。
別に、昴を軽んじたり、居留守を使ったりしているわけではない。
「暁斗、入るよ」
一応、そう声を掛けて、昴は室内へ足を踏み入れた。
今日はオフのはずだが、暁斗は夕刻の修練中だった
木刀の素振りを繰り返す彼を、昴は眺めた。
鍛え上げられた裸の上半身は、汗で光っている。
もう、ずいぶん長いこと、木刀を振っているに違いない。
勤務時間内の訓練ではなく、自発的なトレーニングだ。
スキマ時間には、自己を磨く事に余念のない暁斗。
そんな彼の自律した精神が、昴は好きだった。
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