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勤務時間外でも、己を高めるために木刀の素振りを続ける、暁斗。
彼は、室内に入って来た昴に気付くと、笑顔を向けた。
微笑む暁斗に笑顔を返した後、昴は傍らのソファに座り込んで、それを眺めた。
彼の修練が済むまで、待つつもりだ。
以前の昴なら、大声を上げて暁斗の素振りを止めさせたことだろう。
6回目のタイムリープでも、実際そうだった。
昴本人は、気づいていないのだが。
それほど自然に、彼は素直さや他者を思いやる心を育んでいた。
暁斗への愛情が、それらを育てていたのだ。
まじまじと暁斗を見ていると、いつもなら気にも留めないことが、目に入る。
彼の剥きだしの上半身には、古傷の痕が残っているのだ。
昔なら、男の勲章、とでも呼ばれたものだろう。
そう言えば聞こえは良いが、それはひどく昴の心に食い込んできた。
(あの傷が付いた時は、痛かったんだろうな)
昴がそう思いを馳せた時、暁斗の動きが止まった。
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