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愛おしい。
暁斗は、改めて昴をそう感じた。
(心底惚れる、惚れ抜く価値のある人だ)
そう、思った。
もうすっかり惚れているのだから、惚れ直した、と言った方が正しいのかもしれない。
「お優しいですね、昴さま」
暁斗は素直に、声に出してみた。
優しい、なんて男に掛ける言葉ではない。
そんな風に今まで思っていたが、これは素敵な褒め言葉ではないか。
「本当に、お優しい。私は嬉しく思います」
優しい、と褒められた昴は、ぽっと頬を染め、ふぃと目線を反らした。
手にしたブドウを、わざと無造作に突き出した。
「僕は、優しいに決まってる。ほら、ブドウだって分けてあげるんだから」
優しい、なんて。
(そんな言葉は、初めてもらったかも)
美しい、とは飽きるほど聞いてきた褒め言葉だが、優しい、なんて。
その内面を、心を褒められるのは初めてだ。
何だか、照れくさい。
昴は、ここではまだ、素直になれなかった。
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