85 / 226
27
その日二人は、そわそわと気もそぞろに過ごした。
昴は、バラの手入れで間違った枝を剪定してしまった。
「あっ! やっちゃったぁ……」
ケアレスミスに、ため息をついたが、そこにはセクシャルな熱が含まれる。
暁斗は、やたら張り切って護衛訓練で汗を流した。
「痛い、痛い! 柏さん、力を入れ過ぎです!」
「こ、これは失礼。つい……」
身も心も、やけに熱い。
体を動かして気を紛らわせていないと、昴のことばかり考えてしまうのだ。
二人してそれぞれ、そんな落ち着かない一日を送った。
そして夕刻、昴が暁斗の元へとやって来た。
「来たよ、僕」
「お待ちしておりました」
現れた昴と共に、暁斗は自室で食事を摂った。
やけによく喋る、昴。
声が、時折上ずっている。
意識して、明るく振舞っているのだ。
交代でバスを使い、寝室へ入る頃になると、逆に黙ってしまった。
緊張が、暁斗にも伝わってくる。
ドアを開け寝室に入ると、昴の鼻を甘い高雅な香りがくすぐった。
いつもと違う、バラの匂いの香が焚かれていた。
ともだちにシェアしよう!

