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 その日二人は、そわそわと気もそぞろに過ごした。  昴は、バラの手入れで間違った枝を剪定してしまった。 「あっ! やっちゃったぁ……」  ケアレスミスに、ため息をついたが、そこにはセクシャルな熱が含まれる。  暁斗は、やたら張り切って護衛訓練で汗を流した。 「痛い、痛い! 柏さん、力を入れ過ぎです!」 「こ、これは失礼。つい……」  身も心も、やけに熱い。  体を動かして気を紛らわせていないと、昴のことばかり考えてしまうのだ。  二人してそれぞれ、そんな落ち着かない一日を送った。  そして夕刻、昴が暁斗の元へとやって来た。 「来たよ、僕」 「お待ちしておりました」  現れた昴と共に、暁斗は自室で食事を摂った。  やけによく喋る、昴。  声が、時折上ずっている。  意識して、明るく振舞っているのだ。  交代でバスを使い、寝室へ入る頃になると、逆に黙ってしまった。  緊張が、暁斗にも伝わってくる。  ドアを開け寝室に入ると、昴の鼻を甘い高雅な香りがくすぐった。  いつもと違う、バラの匂いの香が焚かれていた。

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