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「ふふっ」 「どうなさいました」 「暁斗は、こんな洒落た事ができる人だったんだね」 「昴さまのお気持ちが、少しでも軽くなられますように」  確かに暁斗の言うとおり、バラの香りは昴をリラックスさせた。  なじみ深い、一番好きな香り。  その中で、この世で最も愛しい人と結ばれるのだ。  昴の胸は、高鳴った。  どちらからともなく抱き合い、キスをする。  甘く優しい暁斗のキスは、思いやりにあふれていて、昴には嬉しかった。  そして、初めて彼は (全てを、僕にくれるんだね)  喜びに震える唇で、昴は彼の体に残る古傷に、キスを落とした。 (始まりは、ここからだったな……)  暁斗の痛みは、僕の痛み。  そして彼の悦びは、僕の悦びでもあるんだ。  身も心も捧げる想いで、昴は体を開いた。

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