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「申し訳ございません! つい、嬉しくて。色々と……考えてしまいました!」 「嬉しかった?」 「はい」 「僕と一つになれて、そんなに嬉しかった!?」  暁斗の一言で、すっかり機嫌を直した昴だ。  もう、ニコニコしながらパンをちぎって、口に運んでいる。  ふんふんと、鼻歌さえ聞こえてきそうだ。  暁斗は、ホッと一安心した。  安心したので、再度ぶちかました。 「では、今夜もよろしいですか?」 「え、今夜?」  待て待て待て、と昴は両手を上げて激しく振った。 「ダメ! 無理! 毎日なんて、体が持たないよ!」 「あの、その……」 「僕が、いいよ、って言った日だけ!」 「しかし……」 「ダメ、絶対!」  昴の全力拒否に、暁斗は諦めた。 (これは……将来、尻に敷かれるかも)  そう感じたが、次の瞬間には、こんなことを妄想した。 (あんなに綺麗な尻になら、いくらでも敷かれてみせよう)  懲りずにスケベな妄想に耽った。 「暁斗、カフェオレが水っぽいから淹れなおして! コーヒー豆は、ちゃんと深煎りを使ってる!? コーヒーと牛乳は、1:2の比率で!」 「すでに尻に敷かれている私が、ここに居る……」 「何か言った!?」 「いいえ、何にも」  暁斗もまた、ご機嫌だった。

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