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第四章 好きな花は何かな?

 昴の朝は、早い。  朝日と共に起き出し、朝露の消えない内からバラ園にその姿がある。  朝露に潤う、僕の可愛いバラの花たち。 「うん、今日も綺麗だね!」  顔をほころばせ、庭師と共に古い花を摘んだり、葉に異常はないか調べたり。  一通りそれが済むと、お次は3色の花の前で思案する。  深紅、漆黒、そして、純白。 「今日は、これかな」  そして赤いバラを一輪摘むと、胸ポケットにさして飾った。  昴は、いつの頃からか、こうしてバラの花を常に身につけるようになっていた。  バラは、僕の誇り。  それを身につけることで、背筋が伸びる。  美しいこの僕を、彩ることもできる。  そんな思いからだった。  そして最近では、そのバラの色までもが、意味を持つようになっていた。

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