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 釈然としないまま、暁斗は夕食の準備を始めた。  床に、カミツレソウの花束が落ちている。  それも拾ってグラスに活け、テーブルの上へ飾ってみた。 (そういえば、花の話をした頃から、急にご機嫌が悪くなったような気がする)  二人分の簡単な支度を整えていると、のろのろと昴が寝室から出てきた。 「暁斗。お風呂、借りるよ」 「どうぞ、ご遠慮なく」  風呂からあがれば、気分も変わっているかもしれない。  そう考えながら、暁斗は瓶詰の蓋をまわした。  耳を澄ませていたが、バスルームはやけに静かだ。  いつもなら、昴は盛大な音を立ててシャワーを浴びたり、バスタブの湯をあふれさせたりするのだが。  そして、入った時と同じように、昴は沈んだ様子で浴室から出てきた。  髪を乾かす間も、無言。  しかし、お腹は空いていたのか、昴は暁斗の用意した夕食をぱくぱく食べた。  その仕草には、彼の持つ優美さが、やや欠けている。 (やはり、ご機嫌が悪いと見える)  暁斗は肩をすくめる心地で、エビの乗った皿を昴の方へ寄越した。  塩をふって丸ごと焼いただけの、素朴な料理だが、暁斗にしては上出来だ。  キッチンへ立つことなど滅多にないこの男が、調理めいたことをやっている。  昴の胸は、ふわりと温まった。

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