105 / 226

11

 暁斗がそっと寝室を覗くと、ベッドに昴が横たわっていた。  すでに、その白い滑らかな素肌を惜しげもなくさらし、掲げた片手を握ったり開いたりしている。  ドアの開く気配に、顔だけこちらに向けて見せる。  手には、カミツレソウの花束が。  そして昴は、それを大切にていねいに、サイドテーブルに飾った。  開け放たれた窓からは、もう温んだ初夏の風がそっと忍び込んでくる。  今年初めての、地虫の鳴く音が運ばれてくる。 「暁斗」  甘い息を吐くような、誘う声。  麗しいバラの花を愛しみに、暁斗はベッドへ上がった。  すると、暁斗の首に腕をまわし、昴の方から口づけを求めてきた。  軽くついばんだ後、深く貪ると、その吐息はバラの香りがした。  あれだけエビをつまんでおきながら、バラの匂いがするとは。  今更ながら、暁斗は昴とバラの花との深い結びつきを味わった。

ともだちにシェアしよう!