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 暁斗に髪を撫でさせながら、昴は黙っていた。 「眠ってしまわれたか」  そう独り言をつぶやき、暁斗は事後のお清めをしようと動きかけた。  昴の体を拭き上げて、安らかな眠りへといざなう。  彼にとってはそこまでが、愛の行為なのだ。  ベッドサイドのウェットティッシュに手を伸ばそうとした時、ふいに声がした。 「僕の方こそ、ごめんね」 「昴さま?」  寝入ったと思っていた昴は、起きていたのだ。  そして、そのままの姿勢で、密やかな声で言葉を紡いだ。 「暁斗は、ミヤコワスレの花が好きでも、いいよ」  人それぞれ、だもんね。  静かに語った後、昴は続けた。 「でも人間では、僕のこと一番好きでいて欲しいな」 「もちろんですとも……!」  抱き合った二人の間には、優しく温かく、それでいて強い想いが通じていた。

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