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 翌日、朝食の席で、昴が胸につけたバラの色を確かめた暁斗は、目を円くした。  その色は、深紅なのだ。  今日はさすがに白いバラだと、信じて疑わなかったのに。 (昨晩、あれほど激しく愛し合ったのに。その翌日に、赤いバラとは)  赤いバラの意味は、その気になったら、ね。 『毎日だなんて、身が持たないよ!』  そんな事を言っては、焦らしていた昴様だったのに。 (気が向いたら、お相手してくれる。これは、一体……?)  食事を終えた昴に、暁斗はそっと耳打ちした。 「よろしいのですか?」 「……いいよ」 「どういう、風の吹き回しでしょうか」 「昨夜は、一方的に苛められちゃったからね。今夜は、僕が暁斗を苛めてやるんだから!」 「そ、それは、どうも……」 「でも、僕の気が向いたら、だからね」  そう一言、ちゃんと添えてから、昴は去って行く。  いたずらっぽい眼差しを残して、颯爽とダイニングを去って行く。 「はてさて、どんな目に遭わされるのやら?」  顎をひとつ撫で、暁斗は苦笑いした。 (では、その気になるような仕掛けを打たないと!)  暁斗は、花を摘みに行く。  初夏を飾る、ノイバラの可憐な花束を作るため、野を探す。

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