116 / 226

2

 昼、食事を終えて自室から出た暁斗は、回廊を曲がった所でいきなり昴に出くわした。 (寝癖は、もう大人しくなったようだな)  そうは言っても、我が主のご機嫌はいかがなものか。  暁斗が考える前に、昴の方が先に動いていた。 「暁斗!」  暁斗の腕に手を絡ませ、ニコニコと見上げてくるではないか。  その笑顔は、実に明るく朗らかだ。  今朝の不機嫌は、どこへ行ってしまったのやら。  しかし暁斗は、そんな疑問より昴の笑顔につい見蕩れた。 (さすが、社交界の星と謳われる御方だ。何て素敵な笑みだろう)  すると昴は、おまけにこんなことまで言い出した。 「今夜、暁斗の部屋へ行ってもいいかな?」 (これは一体。本当に、どうしたことか)  朝の不機嫌モードは、綺麗さっぱり消えているらしい。 「何か、良い事でもございましたか?」 「まぁ、ね」  ふふん、と得意げに鼻を鳴らす昴が愛らしい。  暁斗は一も二もなく、ぜひお越しください、とこちらも笑顔で返事をした。  それを聞いた昴は、楽しみだな、と鼻歌を歌い出す。  人目を忍んで、素早く軽いキスをした二人は、上機嫌でその場を別れた。  互いに、今夜の逢瀬を楽しみにしていた。  昼に会った昴は、こんな調子だった。

ともだちにシェアしよう!