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 業務を終え、近道にガーデンの一つを横切っていた暁斗は、自分の名を呼ぶ声を聞いた。 「柏さま! 柏さまでは、ございませんこと!?」  甲高い、女性の声だ。  そちらを向いて、声の主を見止めると、暁斗は眉を曇らせた。  数名の取り巻きに囲まれた、派手に着飾った女性。  それは、昴の家庭教師の一人、久保田だった。  文科省の高官を母に持つ久保田は、その七光りで好き放題に振る舞っている。  正直なところ、暁斗が苦手な女性だった。 「柏さま、ご機嫌いかが?」 「おかげさまで」  しかしながら、苦手に感じているのは暁斗の方ばかりで、久保田は彼がやけにお気に入りだ。  顔を合わせるたびに、話しかけてくる。  その大半が、社交界の噂話で、しかも長い。 (早く部屋へ戻って、昴さまをお迎えする準備をしたいのだが)  焦れる暁斗に全く気付かず、久保田はお喋りを始めた。

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