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「今日は、皆さんで焼き菓子を作りましたの」
彼女がそう言うと、周りの女性たちが一斉にさえずり始めた。
「久保田さまは、とてもお上手でしたのよ」
「とても初めてとは思えない、腕前ですの」
「美味しくって、たくさんいただいてしまいましたわ」
女性たちの圧に、暁斗は愛想笑いしかできない。
そこへ、久保田が手にしたバスケットから、その焼き菓子とやらを取り出した。
「柏さまも、おひとついかが?」
断る間もなく、久保田はぐいぐいと押し付けてくる。
(ここまでされては、突き返すわけにもいかないな……)
暁斗は仕方なく、少し焦げ臭い菓子を受け取った。
そこへ、期待を込めた久保田の眼差しが、さらに圧を掛けてくる。
(この場で、すぐ食べて見せろと言うわけか)
お断りすると、さらに大騒ぎになるだろう。
暁斗は黙って、菓子を一口かじった。
「むぅ……」
(甘くて、苦くて、硬くて、不味い)
そんな事を考えながらも、暁斗の顔はまるで表情を見せない。
焦れた久保田は、彼の顔を覗き込むような仕草を見せた。
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