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沈黙を続ける昴は、やがて物憂げに暁斗から体を離すと、意外な言葉を呟いた。
「おめでとう、暁斗」
「えっ?」
何が、めでたいのか。
(私の知らないところで、いい話でもあったのだろうか?)
だが、ようやく昴が心を開いてくれたのだ。
考え込む時間は惜しいと、暁斗はすぐに問いかけた。
「何が、でございますか?」
そう素直に訊くと、昴もやはり素直に答えてきた。
だが、曇った響きは変わらない。
ため息交じりで、こう言った。
「結婚、するんだろ? 水臭いな。僕に、真っ先に教えて欲しかった」
(はぁ!? 結婚? 私が!?)
あっけにとられた暁斗の顔は、月が陰ったおかげで闇の中だ。
昴には、見えない。
彼がそのまま、淡々と話を続けるものだから、暁斗は他人事のように耳を傾けた。
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