124 / 226
10
月の明かりが眩しいのか、昴はゆっくりと瞼を閉じる。
涙が零れはしなかったが、その睫はしっとりと濡れていた。
少し意地悪だな、とは思ったが、暁斗は問いかけてみた。
「私が結婚すると、悔しいですか?」
「……」
「悲しいですか?」
「……」
返事はなく、ただ黙って首を横に振る、昴。
そして一言だけ、ぽつりと言った。
「淋しい」
昴は大きく深い息を吐くと、暁斗の肩に頭を預けてきた。
その言葉に、吐息に、暁斗の心はひどく熱くなり始めた。
うつむく昴の顎に、もう一度手を掛けようとしたが、嫌がって逃げてしまう。
少し強引に頬に手のひらを当て、こちらを向かせてみると、目線を逸らす。
こんなに弱々しい彼を見るのは初めてで、とても新鮮だった。
仲を深めながら共に歩んで、まもなく半年が過ぎる。
それでも昴は、まだまだ未知の魅力を持っているのだ。
暁斗は今さらながら、彼に惚れ直す心地を感じていた。
ともだちにシェアしよう!

