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 暁斗は、涙をこぼす昴の髪をさらさらと梳きながら、優しく微笑んだ。 「あなたは、月のような方です」  そう言って、暁斗は昴を愛でた。 「満ちては欠け、そしてまた満ちる。毎日、いや会うたびに、くるくると表情を変える」  そして私は、あなたのそんなところに惹かれたのです、と暁斗は昴を愛でた。  優しく髪を弄られながら、昴は瞼を閉じて暁斗の香りを胸いっぱいに吸っていた。 (あぁ。確か、半年前の今頃だ。こんな円い月を観ながら、僕は暁斗が好きだと気が付いたんだ)  いや、待てよ……。  昴は、記憶を手繰った。  もっともっと、以前から。  ずっと前から、僕は暁斗を好きだったような気がする……。  すでに、7回目の恋をしている、昴。  7回も暁斗を愛し、彼のためにタイムリープを繰り返す、昴。 (もう少しで、何かを思い出せそうな気がするんだけど……)  しかし、過去の記憶は朧だ。  いつ、どこで、どんな失敗をして、暁斗と結ばれることなく生を終えたのか。  それは冥界の審判者たちが、伏せている。  昴が自力で乗り越えねばならない、試練だった。

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